「うぜぇ…。」 

帝愛が所有するホテルの一室からモニターに映る彼を観ていた。 

最近はどうやら「沼」が流行っているらしい…

(貧乏人が何やってんだか)

「ククク…。相変わらず胡散臭ぇ笑顔だよな」

「うん」

風呂から上がった和也が
私の後ろからモニターを覗き込んだ。
和也も彼を観ている。


「カイジって何…?」 

「さあ?」

知ってそうな顔で「さあ?」って…
それよりも黒崎にゴチョーアイされてるくらいで調子に乗ってたらすぐにあのじじいに潰されんじゃないの?

「一条ってどうなの?」

「何が」

「次期ナンバー2とかどうとか」

「あいつ等と変わんねぇよ」
「は?」

寵愛、というより ただの贔屓で黒崎に目をかけられている訳ではない。
人に取り入る場所が上手いというか、打たれ強いというか 帝愛で生き延びるためのアタマはそこそこある。
私から見たら利根川よりは良いアタマを持っている、足りないのは歳くらいと言ったところか…

「利根川だろ…、遠藤もいた。あれと変わんねぇ
運良くしがみついてるようなもんだ」


「…一緒にしないでよ」

「一条もカイジに負けるぜ」
「……。」


「さくら、お前も行くか?」
「どこに」
「沼でもやったら構って貰えんじゃねえの?」
「そんな金は使わない」
「俺が出してやる」

「…私が貢ぐなんておかしい」

「そっちかよ」

私は和也に会う為ではなく、モニターに映る彼の為この部屋に来ているんだろうか。

「さくら…」

派手なドレスを着た女の肩を抱く彼が憎かった。
得意そうな顔で当たることのない台を応援する彼が好きだった。

「さくら、そろそろ構ってくれよ」

「うん」

和也も気付いてるんだろうけど、
わかっててこの部屋を使うんだ。


一条はカイジに負ける。

それを見せたいんだよね、和也?


一条
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