さて、今日もからかってやろうか。



・・・屋上はいい。
寝転ぶと青い空が一面に広がって
鳥でもない俺でも自由にそこへ飛びたてるような気がするほどに何かから解放される。
その何かが何かはわからないけどな。

毎日違う表情を見せる空と向き合い、惰眠をむさぼれる。
どこかの漫画みたいにタバコを吸うでもなく、
ただ空を眺めてボーっとしてまどろむ。
非生産的だと言ってくれてかまわない。
俺がここを好きなかぎりずっとこんなことをこの学校に居る間、続けるのはもう決定事項だ。


そんな俺の居場所、屋上。
そこで何故
俺が朝っぱらから
こんな授業も普通に行われている時間に
ごろんごろんぐてーと転がったり寝そべったりして暇を持て余してるのかは、まあ言わなくても分かるだろうよ。

あー幸せ。
何もしないっていいなー。
ふははー。

何という馬鹿。
こんなことを屋上で一人考える俺は結構な馬鹿だとは自覚している。
ああしてるとも!

・・・・・いいや。自覚させられたのだ。
誰にかって聞かれると俺は迷わず答えるだろう。
俺が馬鹿だって気付かせたのはアイツだと。
俺の天敵だと。

アイツは何かあるたびに
俺を貶して遊んで言いくるめて・・・
とりあえずとことん好き勝手に言いやがる。

そして最終的な結論はいつも

「君は馬鹿だねえ。」

とケラケラ笑うもんだから
いつも言い返せなくなる俺は必然的にこうなる。

ようするに、
まあ俺ってやっぱり馬鹿なのか。
と思わされるわけである。

一時期はその結論に猛烈に意義を申し立てて
噛み付いたこともあるが


あまりにもそれで俺はみじめな体験をしたのでここで自ら自爆するのは控える。


ほらみろ
噂をすればなんとやらだこの野郎。

屋上のドアを少々乱暴に開けてこちらへやってきたのはアイツである。


「なまえくん、なまえくん。」


・・・・・来た。奴だ。
奴は俺の天敵。
その名も

「・・・・・・・何授業さぼってるんだよ。」

「やだなぁ。僕は二時間目まではしっかり受けて来てから此処にやってきたんだから・・・
一時間目からずっと此処でさぼってる君には言われたくないよ。」


沖田総司。
 

にしてもこいつの言い方は
やっぱりいつも何だかむかつく・・・。

仰向けに寝そべる俺の視界をさえぎって
覆いかぶさるように覗き込まれ、
おはよう?だなんて遅いにもほどがある朝の挨拶を笑顔で言ってくる沖田。
思わずイラッ☆

衝動を抑えず感情のままに拳を向けたら
ひょいと避けられた。
その余裕ぶりが実にうざい。


「わっ危ないなぁ。僕のこと殴ろうなんて朝からなまえは元気ありすぎなんじゃない?」

「何が危ないだ。余裕でかわしやがって。」

けらけらと笑いながら話す沖田が目に入ると
もはや空を見ながらまどろむなんてできないから
仕方なく立ち上がる。
随分と長い間ねっころがってたみたいで
立ち上がると背骨が少しきしんだ。

んー・・・と伸びをしてあくびをすると
沖田はこちらをにやにやしながら見ていた。
何だこいつ。

何か俺についてるか?
むしろお前が何かつけたか?

そう考えて確認するも
いつも通りの格好だと俺は思う。

赤いヘアピンでまとめた肩までの茶髪(一には今日も女々しいと怒られた。)
着崩した制服にかかとの踏まれた上靴。
どこもかしこもいつも通りのはずだ。


んじゃ何なんだよと思い
怪訝な顔して沖田に問い詰める。


「おい沖田。」

「ん?」


相変わらずにやにやしたままのコイツの顔が憎たらしくてちょっと平手打ちしたくなったが我慢しておこう。
後で何されるか分かったもんじゃない。


「俺に何かついてるのか?」

「いや?」


ますます意味がわからない。


「んじゃお前なにニヤニヤしてんだよ気色悪い。」

「うわっ気色悪いとか酷いなあ。」

「うっせえ。答えろ。」


なまえは短気だよねホントと明様に馬鹿にしたように溜め息をつくお前はホントうざいよな!


「で?」

「いや、今日も随分と可愛らしいなあとか思って?」

「は。」



・・・・意味分からん。
可愛らしいって何だ。
喧嘩売ってんのか!?


「沖田あああああああああああ!
 喧嘩だったらいつでも買うぞごらあああ!」

「何言ってるの?
 てか君も毎日ヘアピンアレンジなんて頑張るよねえ。可愛い可愛い。」


「男がそんなこと言われても喜ぶか!
 しかもこのヘアピンを可愛いとか言うな!これはかっこいいファッションだファッション!」


「へー。」


なんだその反応。
にやにや笑いをやめろ!


「でも君の外見でソレやってもやっぱり可愛いだけにしかならないと思うよ?」

と言って近づく沖田。
なっなにを!?

ぴたっと俺の前まで来て止まる。
俺の頭をなでる。
おいこら待て。


「ほら。君ってこーんなに可愛い大きさだし。」


ぶちっと何かが俺の中で切れる。

「ふっざけんな!俺が気にしてることをズバズバ言いやがって!てめぇ今日は許さねえぞオイ!」

つかてめーが俺より20センチもでけーのがわりーんだよマジくたばれ!

という思いを込めて

行け俺の必殺技!


まあ
ただの頭突きですけど。


「っ!?いっつっ・・・・・・!」

「はっ馬鹿がー!沖田隙あり!ふははは!」


不意打ちの頭突きにおなかを押さえて顔を顰める沖田。

ざまーみやがれ!

・・・・・。

ってあれ?
何かおかしくね?

「・・・・・沖田?」

「・・・・・。」

おかしい。
沖田が目をつぶったまま返事しない。
あれ?俺の頭突きってそんなに痛いのか・・・?
まさか沖田マジでみぞおちとかに入って苦しいのか?
いや、いつもの演技だろ?
え。違うのかよ。おい。
どっちだよ!とりあえず返事しやがれ馬鹿!




◇◆◇





近頃の僕は一人の猫に夢中でしかたない。
その子はその子の考えたとおりにしか動かず
他人の干渉を嫌ってるから
なかなか見つけれないし
捕まえれない。

きっとあれは本能と言うんだろうと思う。
本能に忠実にやりたいことをやってるだけなのだろう。あの子は。
自由な姿に惹かれた、と言ってしまえば
聞こえはいいだろうけど
僕のはそんなんじゃないと思う。
僕があの子に夢中なのはそんなものではない。
自由。あの子にそれは似合わない気がしてたまらないんだ。
だって、あの子は空はいいよな。どこまでも広がってる。と言ってるけれど


空を見上げてるあの子の横顔は無表情でしかないから。

僕はそんな君を全て        。





みぞおちに衝撃。
僕の腹部に君の頭。
痛いなぁ。と鈍い痛みに思わず声が出る。

「っ!?いっつっ・・・・・・!」

ちょっと油断してたかもね。
少し眉を顰めた僕を見て嬉しそうに君はお返しだと言わんばかりに笑った。
やってくれる。

「はっ馬鹿がー!沖田隙あり!ふははは!」

その笑顔は少し得意げながらも可愛くて憎めないと称されるものだと思う。
もちろん僕もなまえの笑った顔は無邪気で無防備で可愛いとは思うんだけどね。
でもちょっとおイタがすぎないかな?

しょうがないなあ。
ちょっと意地悪しようかな?

とっくに去っている痛みに悶えるような顔つきで沈黙を貫く。

「・・・・・沖田?」

「・・・・・。」


さすがになまえもおかしいと思ったのか
怪訝そうに僕の方を見る気配がする。
かかった。

「おい?おい沖田?」

「ケホッケホッ・・・っごめん、。っ。」

少し息苦しそうに眉を下げて苦笑いしながら返事をしてやると、なまえの表情が固まる。

いまの表情にセリフを付け加えるならば
「やっちまった。」だろう。
実際君はそう思ってるのかもね。
単純だからね君。

いつも思うけれどホント騙されやすいよね。
あはは。

「えっマジかよ・・・ごっごめんなさい!」

・・・。まさかの涙目。
いやいやそこまでいくの?
何だか僕が悪いみたいじゃない。いや悪いんだけどね。なまえ・・・君ホント掴めないなぁ。
うーん。
どうしようねえ。


「沖田・・・・・?怒ってる・・・よな?」


そんなに不安そうな目しないでよ。
ちょっと罪悪感とか沸いちゃうじゃないか。
どうしてくれるのさ。


「なまえ。」

「・・・・・うん。なに」

べちん


と鈍い音。
僕の指を伝ってなまえの額に衝撃。
いわゆる、

「っぴぎあああ!痛ぁあ!」

まあデコピンという奴だ。
・・・ちょっと力を入れすぎたかな?とは思うけどね。


「痛い?」

「いてえよ!ばかやろう!何なんだよお前!」

「・・・・・僕だって痛かったんだからね?」


俺のデコがああ、と呟くなまえは僕のその言葉に動きを止めて申し訳なさそうなバツが悪そうな顔をして俯く。

「・・・ごめん。」

「まあそんなに痛くはなかったんだけどね?」

謝る君に間髪入れずにケラケラと笑いながら言ってやれば、一瞬何を言われたのか分からずきょとんとする君。
あははマヌケな顔晒して可愛いなあ。

「えーい。」

手持ち無沙汰だったからなまえのあたたかい頬をみにょりと引っ張ってみる。
あ、意外にもち肌。
とか思ってみたり。

「!?ひいっいひゃいいひゃいいいい!やめりょ!」

「あはは!何言ってるのかわからないなあ。君はホント面白いね?」

みにょーんと伸びるなまえの頬を両手で弄んでると痛みから逃れたいとばかりにぺしぺしっと僕の腕をはたく君が少し煩わしいなあと思ったから

手を離す。

「ぅえ!?」

いきなり僕の手が頬から離され
なまえのバランスが崩れる。
ふらっと前へ立ちくらんで倒れる。

ぽすっ。

「・・・・・・君って時々抜けているというか危なっかしいというか・・・。」

「・・・・・・・。」

倒れるなまえを胸で受け止めて、ハァを溜め息をつく。
ホントに君は。

「・・・・・・懲りた?また僕にあんなことしたらただじゃおかないからね?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・死ね。」

「うわ酷い。」

「酷いのはお前の方だ。」

そりゃまあそうかもね。
と呟いて、ぺしりぺしりと軽く君の頭をたたく。

「・・・・・ない。」

僕に頭を押し付けてなまえが何かを呟くけど何を言ったのか聞き取れない。
で?

「なあに?」

「・・・・沖田いみわかんない。」

「うん?」

「俺にちょっかい出すし俺のことからかうし馬鹿にするし貶したりもするから俺苦手なのに。」

へー苦手なんだ?僕のこと。

「苦手なのに。何か時々やさしくなるし俺は嫌いなのにお前がどう思ってるのか分からないし。別にそんなことどうでもいいのにいみわからない。」


・・・・・・。

つまりは何が言いたいの?

「沖田が俺に対してどう思ってるのか全然わかんないんだよ馬鹿。」

・・・・・ああなんだそんなこと。

それにしても、もうそろそろ僕から離れてくれないかなあ。
何かねえ・・・。

そんなことを考えてたら僕に答える気がないと思ったのかなまえは顔をあげて低い声で「やっぱり何でもない。」と呟いて離れてくれた

から

「あのねえ。なまえ。」


びくっと肩を震わせる君の顔を上げさせ
頬を両手で固定して真っ直ぐ見据える。
きっと今の僕の顔はとても不機嫌だという感じなのだろう。
だってこの子おびえてるし。

そりゃ不機嫌に決まってるじゃない。
君はホント馬鹿だね。


「好き。好きにきまってるよ。」

それ以外に何があるの、と呆れた声音で僕は呟く。

なまえは目を丸くさせ奇妙な声をだす。

そんなこと別に気にもならないし気にもしないけど。

そのまま、僕は君に顔を近づかせ。

「っ!」

君が目を瞑る。











ぺたっ。


僕は





君の額と自分の額をくっつけてケラケラと笑った。


「何?何か期待してた?」




目を恐る恐る開いて
僕の笑い声にボーゼンとする君。


ほーんと可愛いんだから。
あはは。





さて、明日もからかってやろうか。

このやろう!




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初の薄桜鬼で沖田で男主でした。
そのうちこの主人公が沖田を名前呼びするようになったのも書きたいです。
はい。そっそのうち!
個人的にはこの後、じゃあねーって言い逃げする沖田。屋上からルンルンと退場の後、土方せんせーにおいさぼってんじゃねえ!と怒られ何だその笑い方は。気色悪いなと言われ何か企んでるんじゃねえだろうなと疑いをかけられ、なーんでもないですよ(笑)という展開をきぼんぬ。
つか主人公乙女すぎる。
(2010/12/21→2011/01/15).


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