『風邪を引くとさ』
『だんだんイライラしてくるね精市。』

ふと窓から外の景色を見渡せば、おとなりさん家の赤い屋根には先日降った雪が薄く積もっていた。それを見てると、雪がまた降らないかななんて期待してしまう。すぐに溶けてしまうような雪ではなく、ちゃんと積もってくれる雪がいい。ああでもJRが止まってしまうのは嫌だな。

俺はそこまで考えたところで、もう一度あの子からのメールに目を通した。どうしたものかな…と少し苦笑して。

『そう?』
『まあ分からなくもないけどね』

と自分でも曖昧に思える返信を送った。きっとあの子はそんな言葉が欲しいんじゃないことを知りながら。

『思うように体が動かないし、声も出づらくて』
『すごく鬱』

すぐに返信が返ってきた。これはかなり滅入ってるのかもしれない、なんてあの子について少し考えた。…それにしてもこの英語の宿題多くないだろうか。

『それは可哀想に』
『大人しく寝てろよ』

そう手短に返して、俺は週明けに提出が迫る英語の問題集にまた取り組み始めた。そして、なかなか今回の範囲は長い、と気づいて溜め息をついた。
同時にマグカップの中の飲み物がなくなったことに気づいて、席をたつ。そうして俺は部屋を出て台所に向かった。

『うーんなんか冷たいよ精市。』『そして寝るのはもう飽きたよ精市。』
『暇だー』

自分の部屋に戻ると放置させていた携帯にメールが来ていた。やっぱりあの子からで。
知るかって思ったね。いやいや大人しく寝てろよ。飽きたよ、じゃないよ。

『俺は暇じゃないよ^^』
『いま宿題やってるんだけど?^^^^』

まったく…。わかってはいたけど暇で仕方ないからって俺にメールされても困るよ。なんなら読書や勉強でもしてればいいんじゃないかと思うんだけど、ああもう手がつかないな。なまえのせいだ。

『ごめん(´・ω・`)』

わかればいいんだよ、もうメール切ってもいいかな……。結局全然進んでないじゃないか宿題。
お大事にくらい言っとけばよかったかな…。

ハッと自分の手が止まっていることに気づくと同時に、机の上で携帯のバイブ音が響いた。今度は誰だ?……急ぎじゃなかったら後で返信しよう。と思いきや、

『精市ー』
『風邪を引くとさ』
『寂しくなるねえ』


「母さん、ちょっとそこまで出掛けてくるよ。」
「はいはい、おとなりさん家?」「…行ってきます。」

まったく。何にも手がつかなくなったじゃないか!これもなにもかもあの子のせいだ。

そうやって俺は苦笑しながら、風邪をこじらせて苦しんでるあの子の元へと向かうんだ。

『しょうがないな』
『一分もせずに向かうから大人しく待ってろよ』


まったく…、おとなりさんに俺がいるのに寂しいのかい君は。
まったくー…、おとなりさんなのにお見舞いに来てくれない精市は薄情者だよ。
そんなこと言う口はどの口だい。
これこれっていひゃいいひゃいやめれーひっぱるなー!


風邪っぴきとお隣にすんでる幸村くんのお話。幸村くんが素っ気ない。けど馬鹿みたいに実は気にしまくり。そんなツンデレーション幸村。新鮮ですね。
20130125


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