「・・・・・・。」


・・・こういう時って正直どうすればいいかわからないんだが。
あー・・・。
なんていうか・・・こう・・・


後頭部に視線を感じます。


「みんなー!少し休憩するぞー!」

グラウンドに円堂の声が響く。
アイツは本当にいつも元気だな。

・・・現実逃避しても無駄か。

ボールを見つめてそんなことを考えてみればふと肩に何かが掛けられた。
視界の端に見えたのは白いタオル。

顔をあげれば円堂がいた。

「風丸?何してるんだ?ドリンク飲みにいかねーのかよ?」

ん?と不思議そうに聞いてくるから、あー・・・と少し迷う。

「いや、ちょっと視線が、な。」

「視線?」

誰のだ?
と聞かれればとっくのとうに気付いてはいるから答えられるのだが。

まあ、たいしたことではないだろうしな。

「円堂は気にしないでくれ。」

苦笑しながら言えば、ふうんそっか!と深くはつっこまなかった。
正直助かる。

「まあ、とりあえず休んどけよ!」

「おう。タオルありがとな円堂!」


・・・ドリンク飲みにいくってことは視線の持ち主に会うってことなんだけどな。

今の自分の顔はきっと困ったような微妙な顔になってるんだろうな、と思いながらマネージャー達のもとに行く。



「風丸!おつかれ!ドリンクあるぞ!タオル・・・はもう持ってんのか!」

「あ、ああ。みょうじも手伝ってもらって悪いな、マネージャーの仕事。」

いや全然。秋ちゃんの頼みだし。

と言うのは、みょうじなまえ。
今日は音無と雷門が来れなくて臨時で手伝いに来たらしい。

俺はこいつとはクラスメイトだがそこまで関わったことはない。
さばさばとした性格からか今日がサッカー部のメンバーとははじめての奴が多いというのに馴染んでいるよう・・・なんだが。

「(・・・・・・見られている、な・・・。やっぱり。)」

「・・・・・・どうした風丸。」

「・・・あー・・・。(それはどちらかというと俺のセリフなんだが・・・)」

眉を顰めて、練習も少しぎこちないように見えたがどうしたんだ?なんて聞いてくる。
・・・大体お前のせい、なんだが・・・・・。
とりあえず、苦笑しておく。
・・・・・・思い切って聞いてみるか。


「「あのさっ」」

かぶる俺の声とみょうじの声。
お互い吃驚しつつ、えー、あー、とか言ってみる。

「あー・・・・・・悪い。みょうじ、先いいぞ?」

「いや、風丸。先言ってくれ。」

・・・・・・。
真剣な顔で言われると正直反応に困るんだが。
まあ、先に良いと言われたんだ。言わせてもらうか。

「お前さ、勘違いだったら悪いんだが・・・練習中に俺のほう凝視してなかったか?」

「!そうそう私もそれが言いたかったんだ。すまなかったな。」

え。いや、まさか謝られるとは思わなかった。
・・・・・・「それが言いたかった」?ってなんのことだ。
つか、そうじゃなくて。


「別に謝ってほしいわけじゃない。みょうじはなんで俺を見てたんだ?」

セリフだけみたらなかなか誤解を受けそうな言葉だと自分でも理解しつつ、正面から聞いて見る。

目をパチクリした後に、ああ、と言葉を飲み込んだのか頷くみょうじ。
あ、何か可愛いなこいつって何を考えてるんだ俺。

煩悩が一瞬横切った俺は思わず首をふる。
彼女はそして言った。


「風丸。私に髪を結わせてくれないか。」

お前の髪があまりにも綺麗だったから凝視してしまった。




真顔でそう言いきったみょうじに俺がはぁああ!?と叫んでしまったのは別に悪くないと思う。





「いやぁ、クラスで見かけたときもいっつも気になってたんだよなぁ。」

「え、あ、ああ・・・。(どうしてこうなった・・・。)」


微笑みながら俺の髪をベンチでいじるみょうじ。

「本当に綺麗だな、風丸。」

正直どういう反応をすればいいか分からない。
別に俺の髪でいいならいじってもいいけど、なんて言ったのは確かに俺だけどっ。
心臓が、持たない・・・・・・!
いちいちみょうじの言葉に反応する自分がおかしいのか!?そうなのか!?
落ちつけ、俺。
こいつは俺の髪に対して色々言ってるわけで、俺に言ってるんじゃない!
ああもう!なにもかもがくすぐったい!こいつの言葉も触られてる髪も!

つか誰か助けろ!
そこにいる鬼道のニヤニヤ顔まじ殴りてえ!つか音無も写メんな!
お前等ホント兄妹だな!マジで!


「おい、もうそろそ」

ろ。やめないか?
と言うつもりで振り向いた。はずだった。

振り向かなければ、よかった。
頭の中でそう呟く俺は振り向いたまま固まっていて。


頬を少し赤らめて笑っているこいつは誰だ。
え、あ?


「風丸!三つ編みにしてもいいか?」


そんな顔で言うなよみょうじの馬鹿!
ああ!もう!ちくしょう!


「もう勝手にしろ!」


叫ぶように言いきって、体育座りに顔をうずめる。
きっと俺は今顔が酷く真っ赤なんだろう。
なんたってもう顔がとてつもなく熱くて仕方ない。


「ありがとう!風丸大好きだー!」

がばっと背中に乗ってきたみょうじの軽い衝撃を、理解した俺の脳内は既にキャパオーバー寸前なんだがどうしてくれるんだ。

それもこれも全部

お前のせいだ!!馬鹿!!!


(どうしてこうも可愛いすぎるんだよ!)






「お兄ちゃん!風丸さん真っ赤っかになってるね!」
「ふん、初々しい奴め。」

「お前ら後で覚えてろ!」





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風丸、女子に口説かれるの巻。
(20110504)

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