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  • 番外編A girl's side 1/3

「今日晩御飯どうする?食べてく?」

「いや、家で何か頼めばいいだろ」


仕事も終わり、駐車場で待ち合わせをして如月の車に乗った。
お互い定時をだいぶ過ぎての退社、お腹も減ってきて運転する如月を眺めながら聞くと、少し躊躇してからそう答えた。

「何か作ろうか?」

「いいよ」


そっけなく言われてしまい、少し寂しくなった。
料理出来ないと思われてるのかな?それとも、彼女だからって手作りとかそういうの嫌なのかな?
干渉されたくないタイプ?

突然不安がよぎる。
付き合うようになってから、ううん、好きになってから如月の言葉ひとつひとつに考え込んでしまう自分が嫌だ。
びくびくして、悩んで、怖くなって。
嫌われたらどうしようとか、手に入ったらもう興味が無くなったとか言われたらどうしようとか、そんな事をいちいち考えて不安になってしまう。
好きになる前は、気づく前はこんな風に考えた事なんて無かったのに、どうして恋は両想いになっても苦しいんだろう。
悩んでしまうんだろう。

恋愛って難しい。
というより、如月が難しい。

たぶん、あたしの事を好きじゃなくなったら、はっきりそう言う人だと思う。
だから言われていない内は大丈夫、そう自分に言い聞かせても心が落ち着かない。

(…うー、また気持ちが沈んできた…)

仕事も終わって、二人きりなんだからもう周りを気にしなくてもいいのに。
二人だけなんだから、仕事中みたいに何もない振りなんてしないでほしい。
わがままかもしれないけど、仕事が無い時くらい甘えたいよ。

「ん?どうした?」

信号待ちをしている途中で、如月がふとあたしを見つめてきた。

「ううん、何でもないよ!!」

慌てて首を横に振ると、「変なやつ」なんて言いながら穏やかに笑った。
それがすごく優しい笑顔で、胸が熱くなる程嬉しくなった。

(…単純)

さっきまでもやもやしていた気持ちが、如月の笑顔一つで雨上がりの空みたいに光がさしてくる気がした。
それでも、そんな自分を悪い気はしない。
振り回されても、悩まされても、好きだから気にならない、なんて恋に盲目もいいところ。




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