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- 正直に、好きって言えよC 3/3
「ちょ、は、早い!」
「うるせー、少しあいつから離れるぞ」
しばらくそんな早足が続き、やっと開放されたのは駅から少し離れた場所にある小さな公園だった。
「はぁ、一体…っ、今日は、なんなの…」
ベンチに座り、息を整えていると、いつの間にか如月はミネラルウォーターを買いに行ってくれたようで、目の前に差し出されたそれをあたしは返事もなしに開けて一気飲みした。
「落ち着いたか?」
「…す、少しだけ」
隣に座り、あたしの様子を見ている。
ふとさっき如月が言った言葉を思い出して、顔が一気に赤くなった。
「お前、まだ顔赤いけど?」
「う、ううん、違うの、こっちの話!」
「…どっちの話だよ」
夜も9時を過ぎると誰もいない公園は静かだ。
風が通り抜けて、木々がさわさわと音を立てて、心が次第に穏やかになっていく。
「で、さっきの話だけど」
「さっきのって?」
水を飲みながら答えると、ふとため息をひとつついてじっとこちらを見直した。
「俺を好きだって話、あれから逃げたいから言ったんじゃねーよな?」
「う、うん…」
「そっか…」
え、そっかで終わり!?
あたしの一世一代の告白が「そっか」で終わり!?
どゆこと!?そんなもんなの?あたしの告白ってそれで終わり?
眩暈がした。
真剣に答えたのに…あたしは如月が好き、如月もあたしが好き
なら付き合うとかそういう話になるんじゃないの、普通。
「じゃ、俺はお前を好きにしていいわけだ」
「うんうん好きに………って、えぇ!?」
「これで思う存分キスしていって事だろ?」
「え、あ、うん、いや違う!そうじゃなくて!」
付き合って下さい、とか言うもんじゃないの!?
そう文句言おうと思ったのに、もう目の前には如月の顔しかなくて、その真剣な表情にドキドキしている間に、目を閉じるしかなかったあたしは何て弱いんだろう。
「ん、…っぁ、…んん!!」
どんどん深いキスになっていく。
走ったばかりで息を整えたばかりなのに、性急なキスに自分の呼吸がついていかない。
「ちょ、もう少し、ゆ、ゆっくり…」
「ムリ、どれだけ我慢してたと思ってんだよ」
「そんなのしらなっ…んっ!」
最後まで言い終わらない内にまたキスが降ってきた。
如月との二度目のキスは、驚きよりもドキドキの方が勝って、くらくらした。
如月の舌があたしの舌に絡み合って、まるで一つになったみたいな感覚に陥る。
腰に回された腕が熱い、頭を支えている手が熱い、如月のキスが、熱い。
キスからあたし達は始まった。
そして、またキスから新しいあたし達が始まる。
そう思った。
end
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