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  • 正直に、好きって言えよC 2/3

でも、もっと早く知りたかった。
好きだって自覚する前に知りたかった。自覚した途端失恋なんて、辛いよ。

「…俺、本気で好きなんだけど」
「……え?」

突然杉本さんの声が低くなった。
と同時に腕をまた引っ張られ、あっという間に店とビルの境目に連れられてしまった。

「ちょ、何ですか!」
「いいから、俺にしなよ」
「やめて下さい!」

強く杉本さんに抱きしめられている。
嫌だ、気持ちが悪い。好きでもない人に抱きしめられるなんて、怖くて仕方がない。
抵抗したいのに力も敵わない、怖くて足が震える。
どうしたらいいんだろう、誰か、助けて!

そう願った瞬間、目の前に如月の姿が見えた。

「ど、どうして…」

驚いて声をかけても、無言であたしたちの様子を見ている。

「何だよ、お前別に相川さんの事どうとも思ってないんだろ?」
その言葉に胸がちくりと痛んだ。
そうだ、何とも思っていない女が同僚に無理やり抱きしめられていたって、そんなのどうでもいいことだ。

また涙が溢れた。
如月に助けを求めるなんて、お門違いかもしれない。
でも、でも願いが叶うなら、助けて、そう心底思った。

「お前、俺の事好きか?」
「え?」
「いいから、答えろよ」
「何で今こんな時に聞くのよ!」
「今だから言ってんだ!どうなんだよ、好きなのか?好きじゃないのか!?」

大声を張り上げて言われてしまい、もうどうにでもなれと思った。

「好きよ!」
「誰の事が好きだって!?」
「あんた、如月仁が好きよ!」

そう叫ぶと、目の前が突然暗くなった。

「上出来」
そう呟いた瞬間、どかっと耳元で大きな音がした。

状況がつかめなくて、落ち着いて目の前にあるものを見ようとしたら、暗くて温かかった。
ゆっくりと見上げると、あたしは如月にしっかりと抱かかえられていた。
タバコの匂いと、香水の匂い、そして温かい胸、さっき杉本さんに抱きしめられて感じた恐怖感は全くない、安心する、この場所。

「な、いきなり殴るなよ!」
「こいつ、俺の事好きだっつーから、もらってくな」
「何だよそれ!お前好きにしろって言ったじゃねーか!」
「てめーの恋愛くらいてめーでやれとは言ったけどな」
「じゃあ!」
「俺がこいつの事好きかって聞かなかっただろ?」

あたしの右手をしっかりと掴んだ後、意地悪そうな顔でにやっと笑った。

「俺、こいつに惚れてるから」

それだけ言って、その場を早足で出ていく。
今度は如月に引きずられるように街中に入っていく。



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