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  • 正直に、好きって言えよB 2/2

「お前、杉本には気をつけろよ?」
「何それ、何を気をつけるの?」
「何をって…まぁいいか」
「はぁ?」

意味の分からない事を言われて戸惑ってると、車は会社の駐車場に付いてしまった。

「夜、俺から離れるなよ」
「どうして?」
「どうしてって、お前好意で言ってんだから、言う事聞けよ」
「何それ、どうしてあたしが言う事聞かなきゃいけないのよ!」
「お前の為に言ってんだぞ!」
「だからそれが意味分からないっていうのよ!説明してよ!」
「いやだ」
「じゃ、あたしもいや」
「…勝手にしろ」
「…勝手にするわよ」

取引先の駐車場、車内で口げんかをする二人。
勢いよく口論をしていたせいで、少し息があがってしまった。
どうしてけんかになるのよ、どうしてあたしは素直になれないの?

好きなのに、如月に可愛い女としてうつってほしいって思うのに心が言う事をきかない。
呆れたかな、呆れたよね、こんな可愛くない女。
嫌いになったかな?嫌だな、それは。すごく嫌だ。
涙が出そう、今までこんな風に思った事ないのに、好きだと自覚した途端に弱くなってる。
口げんかなんて今までいくらでもしてきたし、後悔なんてしなかったのに、今日のケンカは少し違う気がする。
如月は本気で怒ってるし、あたしもそれにつられて本気で怒ってしまった。
だから、怖い。素直になれない自分が怖い。
もっとケンカがひどくなって、もう口も聞かないくらいになったら…そう考えると身震いする程怖い。

「……なさい」
「あ?」
「ごめんなさい!」

小声で搾り出すような気分で謝ったのに聞き取ってもらえず、咄嗟に大声を張り上げてしまった。
(やばい!これ謝ってる態度じゃないよー!)
焦っても口に出してしまったものは仕方ない。恐る恐る如月の顔を見ると、目も口も開けっ放しになってた。

(え?それどういう反応…?)
どうしたらいいのか分からずそのまま黙って見つめていると、突然大声でお腹を抱えて笑い出した。

「はは!お前、それ謝る態度かよ!!」
「あ、はは…そ、だよね…」
「あー、本当すげーな、お前」
「え?え?何が?」
「いや、こっちの話」




(顔を赤くしたかと思ったら、怒ったり、落ち込んだり、泣きそうな顔で謝ったり…忙しいやつだなって事)
なんて事は言ってやらないが。
素直じゃないのは俺も同じ、お互い様だな。

「俺も、言いすぎた、ごめん」
「ううん、あたしも…ごめんなさい」
「じゃ、仲直りついでに、この商談勝ち取りにいきますか」

そう言って笑顔を向けると、相川も一緒になって笑顔になり「もちろん!」と嬉しそうな顔をして答えた。

(それにしても、杉本、あいつとうとう行動に出たか…)
俺もそろそろ本気で動かないとまずい、かも…なんてガラにも無く怯えてしまう。
相川の事になると、なりふり構っていられなくなるのは、惚れた弱みかね。

「どうしたの?行かないの?」
「今行く」

まぁ、それも悪くない、か。


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