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  • 正直に、好きって言えよB 1/2

「お、おはよう」
「…おう」

月曜日、ぎこちない挨拶から始まる私達。
どんな顔をして会えばいいのか土日を返上して考えても全く考えは思いつかず、あっという間に月曜日になってしまった。

「行くか…」
「うん」

そして対して会話をする訳でもなく、今日の仕事が始まる。
今日は営業の仕事がぎっしりで、ほとんどが移動と打ち合わせになる。
ほっとした。会話をしなきゃとか、じゃ一体何を話せばいいんだろう、とか色々考えずに仕事に没頭する事が出来るから。

いつものように必要な書類を持って如月の車が停めてある駐車場に向かおうとした時、後ろから突然声をかけられた。

「相川さん、ちょっと待って」
「…え?」

後ろから慌てて私の方に走ってきたのは、如月と同じ営業課の人だった。
名前は確か…

「杉本だけど、覚えてる?4月に一度挨拶したと思うけど」
「あ、はい、覚えてますよ」
嘘だけど。名前先に名乗ってくれて助かった。
正直、仕事するのに営業課の人をいちいち全員覚えていなくても済むから全く記憶に入れてなかった。

「今日、飲み会があるんだけど、相川さんも来ない?」
「へ?月曜日なのに?」

何で仕事始めの月曜日にわざわざ飲み会をするんだろう。
ヒマなの?営業事務は営業が残して帰っていった取引先に必要な書類を残業してでも納期に終らせてるのに?何様だ、営業は。

と、文句を言っても仕方ない事、分かってる。
それがうちの会社のシステムだ。

「営業課の同僚が今日誕生日でさ、そのお祝いで、飲み会っていうより、お祝いの食事会ってやつ」
「あ、そういう事ですか…」

良かった、良心的な理由で。
仲良しこよしの仕事関係はあまり好きじゃないけど、いくつになっても誰かに誕生日を祝ってもらうのは嬉しい事だもの。
それはすごく分かるし、祝ってあげたいと思う人の気持ちもすごく素敵だと思う。

「でも…あたしが行っても…」
「大丈夫、如月も来るから、一人にはならないよ、俺もいるし」
「…え?」

驚いて如月の方に体を向けると、一瞬むっとした顔をして杉本さんを睨みつけた。
「おい、俺行くって言ったか?今その話聞いたんだけど」
「いや、だって行くだろ?」
「あーめんどくせー」
「相川さん、如月いなくても俺いるし、大丈夫だからおいでよ」
「でも…」
「俺を無視して話を進めるな」
「じゃお前来るのかよ」

そう言われた時、如月は一度あたしを見つめて、ふうとため息を一つついて話し始めた。
「相川が行くなら行くよ、さすがにお前だけじゃ心細いだろうし」
「お、パートナーはさすがだねー相川さんは?」
「…わかりました、行きます」

如月が言った言葉がすごく嬉しくて、つい行くと言ってしまった…
「相川が行くなら行くよ」その言葉、たった一つの言葉が嬉しくて顔が赤くなってしまう。
なんて都合のいい女だろう、散々今まで絶対好きになんてなるもんか!って思ってたくせに、好きだと自覚した途端に、中学生の時みたいに如月の言葉に一喜一憂して。
しかもそんな自分も悪くないかな、なんて…恋って恐ろしい…でも楽しい。


「…何にやついてんだよ」
「え?にやついてた!?」
「…無自覚かよ」

車で取引先に二人で移動中、どうしてもさっきの言葉を思い出して顔がにやけてしまう。



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