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  • 正直に、好きって言えよA 2/2

「じゃ、いただきます」
「い、いただきます」

何だか不思議な気分だった。
同僚と一緒に朝ごはんを食べる。お風呂上りで髪が少し濡れている姿が少し色っぽい。
そんな姿を見たのは、会社でどれくらいの人数なんだろう。
自分が特別のような気がして、少し、いや結構嬉しい自分がいる。
やっぱり…あたし如月の事、好きなんだ。
こんな風に思うって事は、きっと好きなんだと思った。
こんな事でちゃんと自覚、というより納得するなんて思ってもみなかったけど。

「食べたら…帰るね」
「…あぁ」

会話はこれが最後だった。
あたしも何を言っていいのか分からないし、如月も何を話せばいいのか分からないような、言いがたい気まずさがあった。

帰り道、明るい日差しが目を襲い、思わず目を細めてしまう。
でも、何故かいつもと違って、心地よい気分になった。

(月曜日、どんな顔して会えばいいのやら…)
悩みは、それだけだった。




相川が帰っていった。
本当は「もう少しいれば?」と言いたかった。
だけど、かなり限界だった。

酔った相川をおんぶして俺の家まで連れていき、とりあえずベッドに寝かせた。
「んー」なんて言いながら寝てるのに笑顔で俺の枕に顔をうずめた姿を見て、もうどうなってもいいから触れてしまおうと思った。
背中に触れた相川の感触が蘇って、眩暈がする程、頭も体も相川を求めていた。

でも、思いとどまったのは、もし俺がコトを起こした後の青ざめた相川の顔。
予想がつく。たぶん俺だけじゃなく、自分も責める、あいつはそういうやつだと思う。
そしたら俺達の関係は終る。
やっと始まったのに、やっと対等に話が出来るようになったのに、そんな事をしたら終ってしまう。
それだけは嫌だった。

リビングのソファーに寝転がるが、一睡も出来なかった。
何度も相川が寝ている部屋を見て、悩んで、それで一晩過ごした。

「据え膳食わぬは男の恥っていうけどさ」
やっぱり、大事にしたい。
俺の事を好きだって言ってくれた時、ちゃんと意識がはっきりしている時、その時までとっておきたいなんて、お前、笑うか?

「…でも…きつかった…」
部屋に入ると、相川の残り香が香る。

(…このベッドで当分寝れそうにねーな)

月曜日、どんな顔をして会えばいいんだよ…
悩みは、それだけだった。


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