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  • 正直に、好きって言えよA 1/2

「…ん…」
目が覚めると、目の前に見た事がない天井があった。
(どこだろう…ここ)
寝起きでぼうっとしている頭で考えても中々答えが見つからない。

「おはよう」
声の方に目を向けると、そこにはお風呂上りで髪を拭きながら立っている如月の姿があった。

「えぇ!!」
驚いて飛び起きると、どうやらベッドの上で寝ていたようだ。
「ど、ど、どうして!!」
慌てて自分の体を触る。服は着ている。しっかりと昨日のまま。
「んな確認しなくたって、何もしてねーよ」
「だって!どうして!何で!」
頭が混乱する。
昨日如月と飲んで、それで…どうなった?
全く記憶がない自分に苛立つ。

「飲んでる途中で爆睡してるし、起きねーし」
「そ、それで?」
「住所知らねーから家に連れて来た」
「つ、連れてきたじゃないでしょー!」
ベッドの脇にあるテーブルの近くに、如月は呆れた顔でしゃがみこんだ。

「別に、お前はベッドで寝たし、俺はリビングのソファーで寝た、それだけ」
「ほ、本当に…?」
「お前…やったかやってないかくらい分かるだろーよ」
「そりゃ、そうだけど…」

男と女が一つ屋根の下、女は酔って分からなくなってるって時に、何もしてないって言われても…
されてない事に喜んでいいのか、落ち込んでいいのかもう考えがまとまらない。

「あ、か、会社!」
「今日土曜日」
「…そっか、良かった」
ほっと胸をなでおろす。酔って寝過ごして遅刻なんて、社会人としては避けたい所だもの。

「曜日も分からないくらい仕事してんのな」
「え?」

ぼそっと呟かれて、何を言っているのか分からなかった。
聞き返しても「何でもねーよ」とそっぽを向かれてしまう。

「めしは?食える?」
「え、う、うん」
「じゃ、リビング来いよ」
「分かった」

それだけ言って如月は部屋から出て行ってしまった。
ゆっくりとベッドから降り、軽く自分の髪と服を調え、改めて部屋を見回す。

ベッドと小さいガラス製のお洒落なテーブル、棚にはビジネス文書が並んでる。
木製の黒い机には、ノートパソコンや書類が並んでいて、たぶん自宅でも仕事をしてるんだろう、とこんな所で仕事熱心な如月の姿を垣間見た。

「失礼します…」
もう既に家に上がりこんでしまっているのに、何となく急に恥ずかしくなってそう告げた。
「ここ、座っとけ」
指をさされたリビングテーブルの一席に座る。
目の前には焼かれたパンと、スクランブルエッグ、そして湯気があがっておいしそうなコーヒー。



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