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  • 金曜日、こころおどる私 1/2

結婚式は出会いの場

なんて通説を一体誰が言い始めたのだろう。
24歳、イブの年ともなると、徐々に友人や同僚達が結婚をしだす。
結婚式に呼ばれて、ご祝儀をあげ続けて数回。
二次会まで参加したって、何が特別出会いの場があるわけじゃないし、新婦のお祝いの場で男の人の携帯番号を交換するなんてがっついたマネが出来る訳じゃない。
かといって、「出会いの場」目的で披露宴でわざわざ新婦友人の席にやってくる軽い男に対しては軽く引いてしまう。「あたしこの子のお祝いに来たんですけど」とシャンパンを顔に浴びせたくなる程だ。いや、もちろんする訳ではなく、やんわりお断りをしているが。

彼氏はいない、だから結婚の予定もなし。
もちろんステキな出会いがあれば大歓迎だけど、「昨日結婚式だったんでしょ?いい男いた?」何て聞かれても「いや、そういうのは別に…」としか答えられない自分も少し嫌だ。

昔は我ながら惚れっぽかったと思う。
顔がタイプ、性格が優しい、それだけで好きになり、告白もした。
それなりに付き合っていた。
でも、年々「結婚」という文字が重くのしかかり、気持ちにセーブがかかる。
「この人と付き合って、上手く続けば結婚もあるのか…」そう思うと、前に進めない臆病な自分。
でも、結婚なんて一生の事だし、だからこそ今の年で男の人と付き合うって事はとても重要な事だと思う。気持ちは焦るばかり。でも進展なし。
お見合いパーティーに行く勇気もない、合コンで活躍する元気もないあたしは恋愛が向いてないんじゃないかって程最近はマイナス思考だ。
純白のドレスに着飾った幸せそうな友人の姿を、今年ラッシュで見たせいかもしれない。
思いのほか気持ちが沈んでしまっていた。

そんな時、高校時代の友人から電話があった。
卒業してからも頻繁に連絡を取っている、親友と呼べる1人だった。

「ねぇ、来年結婚するんだけど」
「おぉ、8年交際でゴールイン!?おめでとう!!」
高校1年の時に付き合いだした彼と結婚が決まったそうだ。
これにはすごく喜んだ。長い付き合いに不安を感じていた彼女を見ていたから自分の事のように喜んだ。

「で、式の後の2次会の幹事、七海にお願い出来ないかな?と思って」
「もちろん、あたしで出来る事なら何でもするよ!!」
嬉しかったのもあり、簡単に承諾した。もちろん幹事を頼まれるのは初めての事で不安はあったが、それよりも何かしてあげたい気持ちの方が勝っていた。
「そして友人挨拶も…」
「まじ!!が、頑張る…」
「本当?良かったー!!」
電話口で彼女はとても喜んでいた、承諾して本当に良かった。
「彼の同期の友人にも新郎側として挨拶と幹事を頼んだから、二人で連絡取り合って打ち合わせしてくれる?」
「え…うん、分かった」
わりと人見知りな自分が知らない人と幹事なんて出来るのか、と急に怖くなったが、彼女の嬉しそうな声を聞いてしまった以上、断るなんて出来なかった。
「連絡先教えるね、この事はもう相手も知ってるから、たぶん明日には七海宛に連絡が来ると思う」
「了解、待って、今メモするから」
言われた名前と電話番号を手近にあった紙に書き、復唱する。

如月仁、24歳同じ年。
新郎の同期入社で、都内で営業をしている男の人。
「どんな人なの?」
「ふふふ…一言で言うとね、イケメン?」
「イケ…それすごく曖昧じゃない?」
「だってそれしか言い表せないんだもーん」
「ちょっとー初めて会う時誰だか分からなかったら大変じゃない」
「それは大丈夫、だって彼七海の顔知ってるもん」
「…へ?」

びっくりした。何で知ってるんだろう。
写真でも渡した?どんな写真?たとえどうあれ正直自分の知らない間に他の人が写真を見ていると思うと急に恥ずかしくなった。

「ちょ、何で知ってるのよ」
「あ、別に写真渡した訳じゃないわよ?それじゃフェアじゃないし」
「何がフェアなんだか…それで?」
「あたしと待ち合わせして遊んだ時に、たまたま彼と一緒にうちらを見かけてたんだって」
「なるほど…それならいいわ」
「とにかく、連絡来るから会って色々打ち合わせしてね」
「うん、もちろん、良い二次会にする!」
「たのもしい!じゃまたねー」

電話を切って、一呼吸つく。
連絡を待ってればいいのね、彼女の為にも人肌脱ぐしかない…か。
そう腹をくくり、メモに書かれた名前と番号を携帯に登録しようとした時、突然知らない番号から着信が来た。
「いや、まさか明日以降って言ってたし」そう思いながら恐る恐る電話に出ると「あ、突然申し訳ありません」という何とも仕事中みたいな声が聞こえてきた。
「いえ、大丈夫です」と答えると、電話口で大きく深呼吸してる声が聞こえてきた。
「あー良かった、お、いや僕如月仁といいます、はじめまして」
さっき彼女から聞いた名前だった。
「初めまして、相川七海です、あの、連絡は明日以降って聞いてたんですけど…」どうしたんだろうと思い聞いてみると、少し間が空いて彼は答えた。
「あいつが結婚するって聞いて、嬉しくて落ち着かなくて…早く連絡取って打ち合わせしたいって気持ちでつい電話してしまいました」
そう言った彼の声はとても興奮しているようだった。

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