text

  • おまけ

如月に手伝ってもらって私達が会社を出たのは23時前。

何だかんだでこんな時間になってしまった。



「はぁ…、肩こった」
「…そうだね…」
「腹、減ったな」
「…そうだね…」
「明日ダルイな」
「…そうだね…」


会社を出て駅までの道のりを如月と歩く。

でも相変わらず私の頭の中はさっきの言葉でいっぱい。


『営業の如月、事務の相川のこと好きらしい』


何だったんだろ…あれは。

結局何も聞けないまま今に至るし…

やっぱり私の眠気を覚ますだけの嘘?


それとも……マジ…?


………。


いやいや、確かに同期の仲では一番仲のいい男だけど、

今までそんな素振りあった?

や、無いよね?

だっていつも私のこと「バカ」だの「アホ」だの失礼なこと言ってくるし!


これでさっきの話はマジとか都合良すぎだよね?



……嘘かな?


何となく残念だと…思ったり…して…。





「おい」
「………」
「コラ」
「………」
「相川!」
「ひゃぁっ!!」


急に名前を叫ばれたと同時に頭をベシッと叩かれた。



「何よ、急にビックリするじゃないの!!」
「さっきから話しかけてんのにボケッとしてるからだろ」
「そ、そんなことないよっ!」
「ずっと上の空だったくせに、失礼なヤツだな」


この野郎、失礼なのはそっちだろ!




「ア、アンタが変なこと言うから!」
「…変なこと?」
「……や、だから…その…」


すっとぼけてんじゃないわよ。
さっきから私がどれだけ意識してると思ってんのよ。

本当、性格悪い!




「ちょっと、営業の如月さん!」
「何ですか?事務の相川さん」


あ、今ちょっとニヤッとした!
コイツ絶対私が意識してんの分かってる!

あー、ムカツクー!!!




「…さっきの“ここだけの話”ってガセネタもあるよね?」
「さぁ?」
「さぁって…曖昧!?」
「ほとんど噂話だかんな。俺と結城さんとか、お前と久保さんとか、あれはガセじゃん」
「……まぁ…うん」


じゃぁ、アンタがあたしのこと好きだってのもガセ!!?

悔しい悔しいっ!!
絶対遊ばれてるっ!!!


…よし、こうなったら……。





「如月」
「ん?」
「あたし、もう一個知ってる情報あるよ」
「何だよ」


駅までもう少しの道で足を止めた。

私を見る如月の顔が不覚にもちょっと格好良く見えてしまっている。




「あのね…」
「ん?」

耳を私の方に傾けてかがむ如月にちょっと背伸び。



「事務の相川、営業の如月のこと気になるらしい」


どうだ仕返しだ!


…ん?ちょっと待てよ。

“好きらしい”と“気になるらしい”じゃ、私が言った“気になるらしい”って物凄いリアルじゃない!?

ちょ、これ冗談というかマジっぽくない?

ってかぶっちゃけマジでそうっぽいから仕返しになってないような…。


…やばい…。




「へぇ」
「あ、あくまで噂ですけども」
「お前、俺のこと気になってんだ?」


ちょっと!
そうゆうことあっさり聞く!!?




「ア、アンタがさっきからかったから仕返ししたの!」
「からかう?」
「“営業の如月、事務の相川のこと好きらしい”とか言うから!!」
「からかってねぇよ、マジだし」
「えぇっ!?」




23時過ぎ
会社の帰り道
駅に着く数メートル手前


いきなりされたキス

それで完璧にコイツに堕ちてしまったということは、


ここだけの話。


後書きへ

[*prev] [next#]

PageTop

.


.





人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -