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  • 初恋

「初めては俺にしなよ」


そう言われた時、それも有りだと思った私は愚かだった





初恋






相川七海、25歳。
ごくごく普通の会社員。


彼氏はいない。
ずっといない。
25年間ずっと。

正確には中学2年の時に1人だけいた。

でも急に異性として意識し始めてから付き合っていくことがダメになった。


結局1週間もたたないうちに私から別れを告げた。


それから高校生になっても成人を過ぎても、私は誰とも付き合うことはできなかった。


私を好きだと言ってくれる人もいた。

でもそう言われると意識しすぎて引いてしまう自分がいた。


こんな私、きっと一生恋なんてできない


そう思っていた。









「あたしも今年26歳か…」

「まだまだ若いって」

「若くないですよ!!そんなこと言ってるうちにあっという間に三十路ですからっ!!!」




仕事後、会社仲間の如月さんと居酒屋へ寄り道。


如月さんとは同じ部署で飲み友達。


私はこの人が大好き。

自分より10年上のせいか包容力もあるし何でも話せる。


同年代の男よりも一緒にいてずっとずっと楽しい。





「その気になれば相川だったらすぐに彼氏できそうなのに、勿体無い」

「そんなことないですから、ってかもう諦めてるからいいんです!」

「諦めてるとか言ってるわりによく合コン行ってるよね」

「そりゃ行きますよ、彼氏ほしいですから」

「なんだそりゃ」




矛盾ばっかり言う私を笑う。

そんな如月さんに「いいのー!」と言いながら私も笑う。


如月さんと飲んでるとつい時間を忘れてしまうほど楽しい。


いつも時計を見るのが嫌い。
終電の時間が嫌い。



もっともっと話したい、一緒にいたい


この感情の名前を私は知らなかった。






「相川って彼氏いたこと無いってこの間言ってたじゃん?」

「うそ!!あたしそんなことまで如月さんに話してました!!?」

「絶対誰にも言わないで!って酔っ払いながら必死で話してきたじゃん」

「は、恥ずかしい…っ」


本当に恥ずかしかった。

この年でちゃんと付き合ったことがないなんて誰にも言ったことなかったから。


会社の友達にすら架空の元彼話をでっち上げるくらい内緒にしていた事実を、いくら話しやすい相手だからとはいえ話してしまっていたなんて。





「如月さん…引いた?」

「何で?」

「だって…つまり…25歳で…処女ってことですよ…?」



チラチラ視線を送りながらボソッと尋ねた。





「やー‥別に引いてないけど…」

「何その“別に”って!本当は引いてんでしょ!!?」

「違うって」

「嘘!!だって何かすっごい口ごもってる!!」

「そうじゃないって」

「あー、ヤダ!!本当に忘れてほしいっ!!」




あまりの恥ずかしさに私は顔を両手で覆いながらテーブルに埋めた。



そんな私の頭をポンと叩いた如月さんは



「初めては俺にしなよ」


そう言った。

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