最終列車 | ナノ
最終列車
 不二周助と終電を逃してしまう。

「私ね、中学の頃不二のこと好きだったんだ。」
駅のホーム、次の電車が来るまでまだ15分以上ある。
「知ってたよ」
「やっぱり?」
「うん。君は分かり易かったからね」
最終電車の1本前の電車をギリギリのところで逃してしまった私たちは、見知らぬホームのベンチに腰かけて待つ。
会話は途切れ、二人黙って電車を待つ。

まもなく電車が参ります、白線より下がって…

決して苦痛ではない沈黙は機械的な音声によって断ち切られ、全国どこにいてもよく聞く電車のアナウンスが構内に響く。
最終電車は両方面の電車が数分差で発車するらしく、丁度2つのホームにほぼ同時に電車が到着する。

「乗る?」

こんなこと聞いて私はどうするつもりなんだろう。
黙って乗り込めばいいだけなのに、何故か私たちは二人ともベンチに座ったままただ黙って目の前でドアを開け放つ電車を眺める。

「乗らなくてもいいよ」

不二が言い終わるがドアが閉まるが先か。
大きなベルを一つ鳴らしたそれは扉を完全に閉じ、ゆっくりと音を立てて発車する。

私たちは相変わらずベンチに座ったままホームが空っぽになるのを見届けてから、どちらからともなくそこを後にした。



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