百人一首 | ナノ



行先_


 由良のとを 渡る船人 かぢをたえ 
  行くへも知らぬ 恋の道かな
               曽禰好忠


[今日は仕事終わったらそのまま俺んちな]

昼休みに確認したメッセージはそう告げていた。
互いに相手もおらず、ダラダラと毎日のように仕事終わり飲みに出ているうちに何気なく始まったこの関係。
食事だけだったものから、お酒を飲むようになり、身体を重ねるようになり、彼の家に行くようになり、週末は彼の家に泊まるようになり、そしていつからか週末は朝からずっと一緒に過ごすようになっていた。

人に言わせれば、私たちはもはや「付き合っている」らしいが、でも私たちの間に好きだとか愛してるだとかそういうやり取りはこれまで一度もなかった。
気が付けばもう後戻りできないほど私は彼に溺れていたが、気が付いた時には既に遅く、そんな純粋な愛を口にして良い関係ではないような気がしていた。
そもそも侑士が何を考えて私を相手にしているのかが読めなかった。でも、それを確認するほどの勇気も私には備わっていない。

だから、今日も私は言われた通り彼の家に行って週末を過ごす。
私たちはこのままどこへ向かっているんだろう。



歌意:由良の瀬戸を漕ぎ渡っていく船人が、舵がなくなって行く先もわからずに漂うようにこれからの行く末の分からない恋の成り行きだなあ。

▽46番、恋の歌。
激流にもまれる小舟のように行く末も知られぬ恋の不安に途方に暮れる歌。どうすることもできずに翻弄されてしまい、自分の恋もこれから先のことがまるで分らないという心情。
忍足侑士という激流に流されて、気が付いた時にはもう虜にされてしまっていました、というお話。
油断したらかなり長く続けられそうな題材なので、無理やり終わらせた感が否めない。





[ 7/8 ]

[prev] [next]
[list]

site top



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -