百人一首 | ナノ



漂流_


 わたの原 八十島かけて 漕ぎ出でぬと
   人には告げよ 海人の釣船
              参議篁


終わりのないようなこの広い大海原でただ一人、浮かんで波に身を任せればこの世界に取り残されたような気分になる。
視界には雲一つない星空と、闇夜の海に浮かぶ私を照らす夏の月だけ。

大きな月は今にも私に向かって落ちてきてしまいそうなほど朧げな明かりを放っている。

半分水につかった耳は水の音しか聞こえず、静寂が私の身体を支配する。

このまま流されて消えてしまったら…。
きっとあの星々が証人となって景吾くんに伝えてくれるはず。
あの子は一人遠くへ流されて、知らない土地へ行ってしまいました。って。

「ったく、なにしてやがる」

でも君がこの深い海に入ってきて私を捕まえてくれるから、今回も私は流されずに済んだみたい。



歌意:広い海原をたくさんの島々を目指して漕ぎ出してしまったと、都にいる人に伝えておくれ。漁師の釣舟よ。


▽11番、離別の歌。
夏の夜、毎晩のようにただ海に浮かんでぼーっと物思いに耽る女の子。とそれを毎回引き揚げて連れ戻してくれる跡部様。
もちろんここは跡部様のプライベートビーチなので流されてしまうような危険はないし、安全だと本当は分かっているからこそ非現実的な世界に浸る夢主ちゃん。そしてそんなふわっとしている彼女をしっかり繋ぎ止めておいてくれる跡部景吾。着衣のまま海に入って濡れる跡部景吾の色気には敵わん。夏の夜の不思議な時間。





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