mature | ナノ



中学生の君


「なあなあ、科学教室ってどこにあんのー?」
「え?」
廊下を歩いていたら突然目の前に立ちはだかった遠山くんに話しかけられた。
「次の授業、科学教室やろ?ワイ場所知らんねん、一緒に連れてってーや」
「あ、うん…。科学教室は3階やで。」
「へえ、松枝って物知りなんやな!!」
屈託なく笑う遠山くん
「物知りっていうか…入学翌日のオリエンテーションで校内案内された時に…」
「えー、でもあんな一回こっきりじゃ覚えられへんー」
全身を使って会話をするような遠山くんのペースに飲まれそうになりつつも、2人で話しながら3階へ向かう階段を昇っていた。初めて話すのに、まるでずっと前から友達同士だったような感覚に襲われる。それもこれも遠山くんの人柄の為せるわざだろう。
「あーー!!!!!」
突然遠山くんが大きな叫び声を上げた。
「どうしたの?」
「筆箱!教室置いてきてもーた!!!」
「もうチャイム鳴るで…!」
そう言った時にはすでに彼は階段を駆け下りて教室へ駆け始めていた。
第一印象、落ち着きのない人。

瞬く間に消えてしまったクラスメイトを引き留めることもできず、一人で科学教室に向かった時にふと気が付いた。遠山くん、科学教室まで来られるんやろか…。
そんな私の心配も無用で、学校に鳴り響くチャイムと同時に大きな物音を立てて科学教室に滑り込んできた。しかしその遠山くんの手には取りに戻ったはずの筆箱どころか先程は確かに持っていた教科書の類すらなかった。
空いていた私の隣に迷うことなくやってきた金ちゃんに聞けば、
「筆箱探してたら教科書もぜ〜んぶ教室に置いてきてもうた…」
「じゃあ、筆箱は?」
「消えてもうた。」
「えっ?」
「どっっっこにもあれへんねん!鉛筆一本貸してくれへん?」
先生が何やら話している間、科学教室特有の長机を前に二人で頭を寄せ合ってコソコソ話し合った。
先生がホワイトボードに実験器具のイラストを描いて説明を書き加えていく。
隣で懸命にホワイトボードとノートを交互に睨めっこしている彼が、書き間違えるたびに鉛筆で間違えた箇所を黒く塗りつぶしているのを視界の端に捉えた。
そんなぐちゃぐちゃにしちゃって、もう何が何だか訳わからないじゃない…。
私の消しゴムを2人の間にそっとおけば、大きな瞳と目が合った。
「…ええの?」
「もちろん」
「おおきに…!」
首が取れちゃうんじゃないかってくらい勢いよくノートとホワイトボードを行き来させる視線と、噛り付くようにノートに書き写しているその姿が何故か印象的だった。




[ 2/5 ]

[prev] [next]
[list]

site top



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -