6years | ナノ



JH2 春_


【クラスメイト】

「椿何組だった?」
「3組やで」
「なんやー、うち1組やった」
新学期の恒例イベント、クラス替え。去年同じクラスだったみつきとは今年は離れてしまった。どうせ、部活でほぼ毎日顔合わせるからいいんだけど。
ほな、また放課後な!そう言って私たちは昇降口で別れた。みつきは一旦部室に寄ってから教室に行くらしい。
同期の女テニは私とみつきのみで去年1年間はいつも一緒にいたから、部活以外の友達ができるのもいいかもしれない。新学期特有の浮ついた気持ちであまり深く考えずに2年のHR教室がある2階へ足を進めた。

「椿!同じクラスやろ!!」
「あー、他の人の名前確認してへんから分からへん」
「いや、同じなんやて」
階段を上ってる途中で謙也と会った。去年の夏の公式戦以降、男テニのメンバーとは時々話をするようになってた。基本的に練習は男子と女子それぞれ別の日に行うから被ることはないが、休日練習では前半後半で別れているので入れ替わりで顔を合わせたり、筋トレの日なんかは一緒に体育館でトレーニングすることもあった。
特に1年は先輩のサポートで色々な雑用をこなさなくてはならないため、1年の男女が一緒に作業に当たるタイミングなんかもしばしばあった。そもそも謙也は去年も同じクラスだったから喋る機会は多かった。
「えーじゃあ、また同じクラスやん。」
「えー、とか言うなや」
「嬉しいなーと思っただけやで。1年間よろしくな」
「絶対思うてへんやろ。ぜんっぜん感情籠ってへんで。ま、よろしく!」
あのクラスの担任は誰だ、あの教科の担当は誰が良いなんて話をしながら一緒に教室に入った。謙也は一言も言ってなかったから、その人はきっと違うクラスなんだろうと思ってた。
「お、椿と謙也やん。来るの遅いで」
「白石も3組か!っていうか遅いってなんやねん。全然遅ないやろ!」
難波のスピードスターがどうだこうだ騒ぐ謙也を無視して白石は話を続ける。そんな様子を見ると新学期の浮ついた気持ちなど消えて、いつも通りのテニス部のような雰囲気に包まれる。
「謙也もまだまだやなあ」
なあ、椿?なんて突然話題を振られて少し戸惑う。せやな、なんて曖昧に返事をして、とりあえず新しく割り振られた自分の席に着く。
同じクラスの女子の中には見知った顔もある。私は落ち着かない気持ちを新クラスの物珍しさのせいにして女子の輪の中に入っていった。

「女テニの練習日程ってもう出てる?」
関西大会に向けて練習を積み重ねていた春のある日だった。まだ2年なのに白石は部長を任せられているらしく、男子の練習日程を調整するのも白石だった。
「まだ出てへんな。三笠先輩に聞けば分かるんとちゃう?」
「三笠部長に聞くより椿に聞いた方が早いと思うたんや。」
「残念、まだでした」
「そうかー、出たら教えてくれへん?どうせ今日あたりには分かるんやろ?」
「ほんま、しゃーないなあ」
ありがとうな!なんて爽やかに笑う白石がかっこよくて、その笑顔を私に向けてもらえるんだったら練習日程位いつでも教えてあげる、なんてことは言えないから、一言「どういたしまして」と言って済ませる。
白石と話をすると胸が高鳴る。具体的にいつからかは分からない。
夏の公式戦が終わった後の部活で初めて話した時か、秋の学園祭でテニス部合同で出し物をした時か。気が付けば不意に向けられる気遣いにドキドキしていて、ほんの些細なことでも会話ができると嬉しかった。テニスという共通項があって良かったと思う。
「せや、今度ラケットショップ行こうと思うんやけど、白石も一緒に行かへん?前に新しいラケットみたいって言うてたやろ」
ほら、こんなん私もテニスやってなかったら言えへんやろ。
テニスの話なら白石も興味持ってくれるの分かってるから、私はそれを利用して白石と繋がりを持とうとしてる。ずるい女や。
「それ、ええな。今週末やったら女子も練習ないんやろ?」
丁度ええやん、笑う白石は何も気付いてないんやろうね。私知っててん。
今週末は男子も女子も練習入ってへんの。だからこのタイミングやねんで。
白石は知らへんやろうな。週末、楽しみやな。はよ一週間終わらへんかな。





[ 3/18 ]

[prev] [next]
[list]

site top



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -