6years | ナノ




あとがき

ここまで読んで頂き本当にありがとうございます。少しでも楽しんで頂けたならば幸いです。連載中に拍手を下さった方もありがとうございました。拍手の通知を見て俄然やる気になりました。きっと誰も読んでいないと思っていましたので。読了後の感想コメントなども頂けますと大変助けになります。ダメ出しも受け入れますので、何かありましたらお願い致します。
ここからは私の所感、つまりただの長ったらしい感想文ですので、お読み頂かなくても結構ですし、これを読んでからもう一度本編に目を通して頂くのも良いかと思います。

書き手として拘った点を2点ほど。
まずは「呼称」。
呼び名ってその人を象徴するものであり、同時に相手との距離感や関係性を表す指標でもあると思うんです。
女の子は白石のことをずっと「白石」と呼び続け、白石は彼女を最初から最後まで名前で呼び続けます。変化しない関係性が呼称にも表れています。
一方、財前との関係性は6年間を通して大きく変化していますし、それに伴って呼称も少しずつ変わっていきます。財前くん、財前、光。彼もまた、最初は苗字に先輩呼びだったのが、下の名前のほうで呼ぶようになり、時々敬語が崩れる。でもまだ呼び捨てにはできません。これからも更に発展性が見える二人です。
2人の心的距離が時間の経過と共に縮まっていく、それが読者の方に伝わった自信こそありませんが、自分では満足できている点です。

女の子は確かに白石のことが好きだけれど、きっとそれは憧憬や羨望に近い感情だったと思います。かっこいいテニスをする人、自分には持っていないものを持っている人。白石のことは最初から好きだから、彼女は白石が絡むと少しぎこちない。意識してしまうから。
でも財前の場合は違います。財前といる時は彼女はリラックスして過ごしている。意識していないから。それが財前も心地良いと感じる反面気に食わない。ぐいぐい行動するけど、彼の押しも一歩足りなくて全然意識してもらえない。でもやっぱり自然体で過ごせる財前の方が相性が良かったんだと思います。気張らない関係。それにきっと財前とこの女の子は似たもの同士です。

それぞれのお話が孤立しているようで連動している。切り取られた日常の1エピソードにすぎない、でも生きている登場人物の人生は絶え間なく流れている。そしてここで描かれたエピソードの裏に、他のドラマが見え隠れする、そんな長編にしたいと思って書きました。出来ていたかは…どうでしょう。難しいです。

各お話には私が書きたかったシーンが必ずあり、それを基にその回の全体像を膨らませる、という手法で書かれています。
なので私の中では勝手にそれぞれのお話の中でお気に入りシーンがあります。
例えば中1春ならば桜で地面が埋め尽くされた公園。中2夏なら体重で沈むソファ、中3冬は先輩に聞きたいことは沢山あるのに黙って問題を解き続ける財前、高1夏なら「オーダーは?」「S1っす」という素っ気ないけれど信頼関係が感じられる会話。などです。全部書くときりがないですが、そんな感じです。

以上2点が私の拘り。他にも細かな拘りを無数に散りばめていますがそれは良いでしょう。1つだけ言うならば「対比」ももう1つのテーマでした。何かにつけて対比するように描きました。例えば中学入学時の白石の高揚感と高校入学時のドライさ、など。

元々このお話をちゃんと書き始めたのは2020年の12月頃だったと思います。自分のノートに色々とお話を書き溜めているうちに、サイトを開設してそこにすべて纏めたいと思うようになり、お正月休み帰省もできず仕事の都合で引っ越してきた新天地で一人猛烈な暇を持て余しサイト開設に至りました。
開設時には中学校のお話と高3のお話が8割ほど書きあがっている状態でしたので、欠けているお話をつけ足しながらぼちぼち更新していくつもりでした。しかし仕事が始まってからコンスタントに更新する自信がなく、せっかく書いたお話どうせなら全部一気に載せてしまおうと思いアップしたらば、さっさと完結させようという気持ちになってしまい一日2話ペースで書いていきました。
正直高2のお話はどれも自分で納得がいっていない状態のまま上げてしまって少し悔やんでいます。いつか修正したいと思いつつ、もう上げてしまったのだからこれはこれで、という気持ちもあります。
そもそも高校生の性描写に私はとても抵抗があります。一方で中学生の時からそのままダラダラと体の関係を続ける展開も考えましたし、一番最後のお話もしくは後日談的に描写することや、そもそも体の関係は匂わさないことも考えました。

元は追憶を除く一番最後のお話を最初に書き上げており、その時は年齢設定もなく、オトナの二人を前提としてピロートークのつもりで書いていたものです。その会話文に繋げたいという思いがありましたので、結局はこのような形になりました。
最初は会話文のみにするつもりだったのですが、それだと少し無理がありましたので、そこは断念。女の子の心情描写が追加されました。しかしやはり性描写の点については今でも悩んでいます。

あとは白石の告白です。好かれているような描写をしつつ告白まではされない方が良いような気がしました。でも1番最初に書き上げた最終話の会話部分を変更するつもりはありませんでしたので、こうなりました。うーん…白石が告白しないまま、女の子を好いていたのかも明らかにならない方が物語としては趣があったような気がします。
でも「追憶」の歌詞を改めて聞いて、なんだか第1話の情景にぴったりだなあと思いましたので、これもなしではないかな。読者の方にも是非今一度歌詞に集中しながらあの曲を聴いてみて欲しいです。驚くほど歌詞と物語の中の白石がマッチします。

同じ時間軸で男子側の視点で書きたいお話も一部ありますし、内容を既に考えているものもあります。男子側で補填することを前提としている本編のお話も中にはあります。
ですがそれをサイトにアップすることになるかどうかは分かりません。
今後の更新もどうなるかは未定です。(開設1週間ちょいで…笑)
短編を増やしたいという思いもありますが、何も決めておりません。
ひとまずはこの長編を完結させることができてホッとしています。書いているときはとても楽しく過ごせました。結局は自己満足でしかないのが私の創作です。
また何かお話が書ければいいな、と思いつつ。書けなくても良いかもしれないというくらいの温度ですので。書きたくて仕方がないというくらいの熱が起こるまではしばらく大人しくしていると思います。

ここまで長ったらしい文章を読んでくださった方がいらっしゃいましたら、感謝いたします。本当にありがとうございました。

2021.1.9 綾瀬


[ 18/18 ]

[prev] [next]
[list]

site top



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -