短編 | ナノ



朝陽の溶かす夢_


私も光も手探りで、ぎこちない手付きでお互いの温度を確かめあった。
不器用に互いの衣服を剥がし合って、上手く取り払えなくて、力づくで剥ぎ取って、がむしゃらにその肌に自分の体温をぶつけて。
気持ち良かったのかどうかも分からないくらい無我夢中で初体験はあっという間に過ぎていってしまった。
朝起きてみれば、なんだセックスなんてこんなもんか、そう思うくらいあっけなかった。
夜にはあんなにお互い夢中で求め合って、高め合って、光しか見えなかったのに、目が覚めれば、夢も醒め、結局私たちはただの他人でしかないという事実だけが残った。
眠っている光を見れば、昨晩の彼とはまるで別人のように見えて何故かゾッとした。
昨日はあんなに官能的で美しく見えたその肉体だって、朝陽に照らされればただの男の裸でしかない。
あんな目をして私を見つめていたのに。夢中で私の身体を貪って、骨の髄まで吸い尽くすくらいに求めて、力強くその腕の中に閉じ込めてくれたのに。
乱れたシーツも、床に落ちた枕も、横たわる裸体も。醒めてしまえば、何もかもが滑稽に見えた。





▽ロストバージンなんて存外あっけない。日が昇れば途端に現実が降り注いで、日常に戻るだけ。



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