短編 | ナノ



握手_


好きな人に好きって言いました。

その人は少しだけ驚いた顔をしたあとに、カァッと頬を染めて目を細めて笑っていました。
それはとても嬉しそうな笑顔で、彼のその時の表情を見るだけで私も幸せになれるような気がしました。

その後に彼は片手で自分の頭を掻いてちょっとだけバツが悪そうな顔をしながら言いました。

「あぁー…なんちゅーか…ほんまは俺から言いたかってんけどな。カッコ悪いな、俺」

「そんなことないよ」

その言葉に再び笑顔を浮かべた彼はやっぱり凄く嬉しそうで眩いばかりでした。

「じゃあ…えっと、まあ…」

しどろもどろにしている彼の次の言葉を私は黙って待ちました。

「うん、なに?」

いつまでもモゾモゾして決定的な言葉をくれない謙也くんを待ちくたびれた私は、もう自分から言ってしまおうかと思ったけれど、でもそこはもう少しだけ彼の勇気と思い切りに期待してみることにしました。

「これから…よろしくな」

照れながらも満面の笑みで差し出されてきた彼の右手に私の右手を重ねて、私も彼に笑みを返しました。




▽忍足謙也に幸せになって欲しかった話
初めての文体。最初の一文が書きたかっただけ。



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