短編 | ナノ



針の痛_



「んー?気付いたら開いてた」
電車が揺れるたびに一緒になって微かに揺れるその輝きがふと気になった。それだけのことだ。
ピアスいつ開けたんすか?と隣に立つ先輩に聞くと彼女は無邪気に笑いながらそう言った。
「なんすか、それ」
大した話でもないのになんとなくはぐらかされた感じがして面白くなかった。
はあ、とため息をつく俺の左耳に細い指が伸びてきた。
「サクッサクッサクッ」
そう言いながら耳たぶに人差し1本で触れてくる。
「なんですか?」
「ピアス、開ける時。そんな感じやで」
へぇと答えると、先輩はあっと声を上げる。
「もし、ピアッサー使うんならパチンッパチンッパチンッ、やな」
相変わらず屈託なく笑っている。
そもそも俺は別にピアスなんか開けるつもりないし。あんなん耳についてたら邪魔でしゃーないやろな。

流れていく外の景色をぼーっと見つめながらなんとなく自分の左耳に触れてみる。
「光、耳に穴開けたくなったん?」
そう聞いてくる先輩の耳には左右併せて5個の輝きが付いている。いくらなんでも多すぎやろ。
「いや、別に。なんとなく気になっただけっすわ。」
ふぅんと言いながら俺の横顔を見つめてくる先輩の視線に耐えられなくなって顔を少し背けた。
似合うと思うんやけどなあ…そう呟いた声が聞こえたがわざと聞こえないフリをした。


公式戦の応援席に先輩の姿を見つけた。
先輩は知らんと思いますけど、あれから俺もピアス開けたんすよ。先輩の言う通りサクッと一瞬でしたわ。
耳にがちゃがちゃ付いててほんま邪魔でしゃーないっすけど、これもまあ悪くないっすわ。

















▽不器用な後輩光くん可愛いよね。多分彼も先輩と同じでニードルでサックリ行ったんじゃないかなあ、と思います。ピアッサーをいちいちセットしなおして沢山開けるのも可愛い。
先輩にあけてもらうのもいいかと思ったんですけど、拗らせ不器用財前になりました。
彼の言う「まあ悪くないっすわ」は「ばちくそ最高」の意。
財前じゃなかったらこんなのキモすぎる。

この先輩、実は財前くんに恋してるとか、実は別に恋人がいたとか、実はお兄ちゃんの友達だとか、実は近所の幼馴染お姉さんだとか、色々設定あっていいと思います。
個人的には忍足謙也の彼女説を推したい。




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