短編 | ナノ



大人の階段_


「ねえ、謙也、いいの?きっと後悔するよ」

赤らんだ顔で私を組み敷く謙也に問いかけた。
謙也が今そういう気分なのは、きっとさっきまで飲んでいたお酒のせいだよ。

「お前とだったら後悔したりせえへん」

その言葉さえも、酔いに任せたうわ言のようなものなのに。

ズルい私は、まるで私を求めて止まないような振りをする君の首に腕を回した。



「俺、ようやく彼女できてん」

謙也の初めてを奪った1か月後、嬉しそうにはにかむ彼の隣には無垢で可愛らしい年下の女の子が連れ添っていた。
ほらね、謙也には私みたいなズルい女よりもそういう純粋な女の子がお似合いだよ。





▽初めてを奪ってしまえば手に入ると思ったのに、結局心までは奪わせてくれなかった忍足謙也。



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