友達以上恋人未満_
冬のテニスコート。
友達に誘われて大会の応援に来たはいいが、屋内の休憩所もなく冬の寒空に曝され続けた身体は内臓まで冷え切ってしまっているような感覚に陥る。
雲一つない冬晴れに、隠れる場を失った太陽が懸命に地上を照らす。
フェンス越しに見る不二君は、額に汗を流してラケットを振っている。
日差しの強さに反比例するように、指先は少しずつ感覚が失われていく。
試合を終えたらしい両者はネット越しに向かい合って握手をしているのをぼーっと見つめた。
その時コート脇でチームメイトと二言三言交わす不二君と目が合った。
ふと微笑みを浮かべた彼がすかさずこちらに向かって歩いてくるから、私はその場に根が生えたように固まってしまった。
「寒かったんじゃない?応援、来てくれてありがとう」
私の両手を掴んだ不二君の手がそれをそのまま彼の頬まで誘導した。
私の手に挟まれた不二君の顔が、吸い込まれるように頬を寄せている。
「君の手は冷たくて気持ちいいや」
私の手を上から包み込む不二君の手のひらはとてもあったかかった。
▽不二君に温めてもらって急速に感覚を取り戻す指先
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