短編 | ナノ



alcoholic girlfriend!!_


かなり飲んでグルグルする視界、フラフラになりながら何とか財前と暮らすマンションに辿り着いてバッグの中から鍵を取り出す。鍵穴に上手く鍵が刺さらなくてガチャガチャしてたら、突然中から鍵が開けられる音がして扉が開くからびっくり。
泥酔した私の様子を見た財前がわざとらしいくらい大きい溜息を吐いている。

「お前ほんま何してんねん」
扉を開けてくれた財前に腕を引かれて覚束ない足取りで玄関まで進む。
立ったまま靴を脱ごうとするけど手元も視界も異常をきたしているため上手く脱げなくて苦戦してたら財前が屈んで私のショートブーツのチャックを下ろしてくれた。
立ち上がった財前の肩に掴まって片足ずつブーツを脱ぐ。
「なんぼ飲んでん」
「むっちゃ」
「ええ加減にせえよ、お前」
私の腕を財前の肩に回して、腰を支えながらリビングまで連れて行ってもらう。
部屋の全体照明は消されていて、窓際に置かれているスタンドライトの淡い暖色の光がほのかに部屋を照らしている。ガンガンする頭にはこれくらいの照明の方がありがたい。
お風呂上りっぽい財前がいい匂いで、支えてもらいながら胸に顔を摺り寄せた。
「光、ええ匂いする」
「水持ってくるからここ座って待っといて」
ソファまで誘導されてそっと座らされた。私を支えてくれていた財前がいなくなってしまったので、自分で身体を支え続けることもできず、重力に任せてソファに倒れこんでしまう。
上半身をソファに横たえると、どこまでも身体が沈んでいってソファと溶け合いそうな感覚に襲われる。目を閉じると頭がぐわんぐわんして、そのまま遠くの世界に飛んでいけそうな気がする。
「ほら、これ」
ふいに降り注いだ声に意識を引き戻される。
私の肩を掴んで上体を起こされ、すぐ隣に財前が座ってくる。隣にいる財前にもたれるようにして再び目を瞑れば、ほっぺたに冷たいボトルを押し付けられて目が覚める。
「早よ飲んで。化粧落とすで」
ボトルの蓋を開けようと手をかけるも、思いのほか固くて中々開けられない。
「あけて」
ボトルを差し出せば本日何度目かわからない溜息が聞こえる。
それでも私からボトルを奪ってすんなり開けてくれるから、財前も大概甘いと思う。
いつの間に持ってきていたのか、いつもは洗面所の棚にしまってある旅行用のクレンジングシートがテーブルに置かれている。
冷たい水を流し込めば少しだけ頭がスーッとするような気がする。それでも廻る視界は変わらない。
財前がパックからシートを1枚取り出しているから、目を閉じて顔を少し上に向けて待つ。
私が酔っ払って帰ってきた日はこうしてシートでクレンジングを済ますのを見ていた財前が、いつからか自ら進んでやってくれるようになっていた。調子がいい日はシャワーも付き合ってくれる。正直今日はシャワーどころじゃないくらい酔っ払っているのだけど。

ひんやりするクレンジングシートの感触が額に触れる。
「なあ、何時から飲んでたん?」
「んー、16時くらい?」
財前に顔を拭いてもらいながら答える。
「は?そんな時間から飲んで今帰ってきたん?何時やと思ってんねん」
「んー、20時くらい」
「あほ、0時半や」
終わったで、その声に目を開けようとすれば一瞬だけ唇に温もりが落とされた。
チュッと音を立てて落とされたそれにパッと目を開けば隣に座る財前と目が合う。
財前の首に腕を回して抱き着いたら、彼も腰に腕を回して抱き締め返してくれる。
しばらく夢中になってキスをしていれば財前の手がそっと私の髪の毛に触れて、それを耳にかけて後頭部を撫でてくれる。
財前の手もキスも何もかもが気持ちよくて、財前に体重を預けるようにすればちゃんと受け止めてくれる。ただでさえお酒でグルグルしている頭が酸素不足で余計働かなくなる。
「したい」
唇を離して目を見つめながら呟けば、彼の瞳の奥が揺らいだのが見えた。
「あかんで」
予想に反して返ってきた言葉は「否」。
財前の物欲しげな表情と発せられた言葉が一致せず混乱する。
「なんで?」
「なんでもや」
「したくないん?」
財前に腕を回したまま少し距離をとって聞いてみる。
「そういうことやなくて」
「じゃあなんでダメなん?」
再び財前の唇にキスをすれば拒絶はされず、私のキスに応えてくれる。
「お前どうせベッド行ったら寝るやろ」
「寝ない」
「寝る」
「寝ない」
「覚えてへんかもしれんけど、お前前にもそう言って爆睡やったで」
その言葉に記憶を辿るも、全然思い出せない。
「ほら、はよ服着替えて寝るで。」
その言葉に両腕を勢いよく上に上げれば呆れたような笑いが聞こえてくる。
「大きい子供やな」
「光が甘やかすからやで」
「調子乗んな」
厳しい言葉とは裏腹に丁寧にブラウスをまくり上げて脱がせてくれる。
キャミソール1枚になった状態で抱き着けば無理やり剥がされてしまう。
「今日はやらんで。」
寝室の方に歩いて行ってしまった彼を見ながら自分で残りの衣服を脱いだ。
戻ってきた財前が新しい下着を置いてくれて、私が今しがた脱ぎ捨てたばかりの衣服をまとめてランドリーの方へ持っていく。
新しい下着に着替えて、古いものをランドリーに持っていけば財前がそれをネットに入れて洗濯機の中へ放り込む。
財前は下着1枚でうろうろしている私を抱きしめて、片手で器用に歯ブラシを取って歯磨き粉を出している。二人で鏡の前に並んで歯磨きをしていると急に眠気が襲ってきてそのまま財前の胸にもたれ込んだ。
口を漱いで歯磨きを所定の位置に戻した財前に笑われる。
「ほら、すぐ寝る」
「えっちしてくれないから眠くなっただけ」
「あほか」
頭を乱雑にガシガシ撫でられて、お酒の廻り切った頭がガンガン痛む。
「ベッド連れてって」
自分の歯磨きを終えて光の首に腕を回して抱き着く。
「はいはい」
面倒くさそうに私を抱き上げて寝室まで運んでくれるから、並んで立つ時よりも近くなった財前の頬にキスを落とした。
優しくベッドの上に下ろされて、自分で布団に潜り込む。
財前は着ていた部屋着を脱いで下着1枚になっている。

「はやくおいで」
部屋の電気を消しにいった財前のために枕元についているライトをオンにした。
布団の端を持ち上げて財前を迎え入れる準備を整える。
広げた状態の私の腕の中に彼を閉じ込められるかと思ったけど、実際は私が財前の腕の中に閉じ込められるような体勢になる。
財前が私の首元と脇の下に腕を差し込んで、二人が密着すれば素肌のぬくもりが触れ合う。
「寝る前にキスだけして?」
触れ合うだけのようなキスから徐々に深いものに変わっていって、私の背中に回された財前の手が背中を撫でる。
ぎゅっと抱き着けば熱をもった感触を下腹部に感じて、欲しがってたのは私だけじゃなかったのが分かって嬉しくなる。
「この続きは明日な」
ベッドライトに照らされた財前が私の髪の毛を撫でながら凄く優しい顔で見つめているから、幸せな気持ちが胸いっぱいに溢れてくる。
「楽しみにしてるよ」
「今から体力つけときや」
チュッと額にキスを落としてから財前が枕元のライトを消した。
完全に暗闇となった寝室で財前の体温を肌に感じながら瞼を下ろせば、私の意識はすぐに途切れた。






▽なんやかんやで世話焼きな財前光良いですよね。
普段あんま甘えてこない彼女だからこういう時だけ甘えてくるのが可愛くて堪らなかったりして。
でも彼女がベロベロになって深夜に帰ってきたらもっと怒っていいんじゃないですかね笑




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