「今年の夏、どうだった?」
「唐突かつざっくりだなあ」
「なんでよ、遊びにどこ行ったとかあんじゃん。幸村の夏について聞きたい」
「…みょうじ、暑さで頭やられてるんじゃないの」
「暑さじゃなくてハードワークでやられた」
「…?みょうじの夏はどうだったんだい」
「私は夏らしい日々をおくったよ。夏祭り、プール……の関係のバイトでエンジョイしたよ!!」
「…なんでキレてるんだよ。自分で決めたバイトだったんだろ?」
「…新しい浴衣とか水着、買おうと思って、」
「うん」
「でもいざ買ったら友達との予定合わないやら合ったら合ったで夏風邪とか!私が!!結局水着着る機会なくて終わったの夏休み!!」
「うるさいなあ」
「もー…せっかく買ったのにさー…」
「温水プールでも行けばいいじゃないか」
「学校始まると皆忙しいんだもん。部活とかバイトとか色々」
「一人で行けば?」
「なにが悲しくて独り流れるプールを漂わなくちゃならないの?」
「可哀想すぎてナンパもされないだろうね、それ。…早急に着たいのかい?」
「そりゃもちろん!時間経つと輝きが失われて見えるのがファッションってもんよ」
「へえ、そうなんだー」
「棒読み過ぎる」
「…付き合ってあげても、いいよ」
「え、私と?」
「いやお前のプール行きに。」
「やっだぁ、私の水着姿見たいの?幸村ったら案外むっつ、」
「水着なんて来年までしまっておけばいいよ、そうしなよ」
「ちょ、待って!珍しく優しいこと言ってくるから少しふざけただけなの一緒にプール行こ!?」
「……」
「ゆ…幸村さーん…」
「……今日、部活ないよ」
「え、私、今日バイト」
「水着なんて一生しまっておけばいいよ」
「ままま待って!明日以降なら帰宅部の私常に暇人!」
「生憎テニス部の俺は常に忙しいから。ま、独りで漂っていればいいんじゃないかな」
「えええ…そんなー…独りで漂って溺れかけて助けて貰ってお連れ様は?って言われて独りって、なにそれ悲しすぎるんだけどどうしよう」
「…あぁ、もう、今日何時まで?バイト」
「ゆ、夕方…16時には終わります!」
「2時間くらいは取れるかな。バイト終わったら連絡して。迎えに行ってあげるから」
プールに行く用意、忘れないように。
幸村と夏の後悔