「さむっ…」
「だからそれでは薄いと言っただろう」
「だってダウンで着膨れするのやだ…。あのタイヤみたいになるじゃん」
「タイヤ?」
「ほら、ソフトクリームのお化けみたいな…」
「あぁ、ミシュランのビバンダムのことか」
「なにそれ」
「なまえの言う、タイヤメーカーのソフトクリームのようなお化けのようなマスコットだ。本名、と言うべきか。実際はソフトクリームではなくタイヤだが」
「初めて知った。…さむっ」
「ほら、前を閉めたらどうだ」
「うん。……」
「…」
「…ねぇ蓮二」
「なんだ」
「ハロウィンとクリスマスに浮かれて家には仏壇があって新年は神社に初詣。日本人って何教なの?」
「急だな。あえて選んでいなければキリスト教の意識はないだろう。日本総人口、神道、とは聞くが。」
「しんとう、教?」
「いや、教はつかない。神道だけだが、れっきとした日本の宗教だ。自然や自然現象を敬い、それらに八百万の神を見出だす多神教。神と人間とを取り結ぶのが祭祀であり、その祭祀を行う場所が神社。つまり今、初詣の参拝列に並ぶ俺達は神社神道だと言うことだ」
「でもうち仏壇あるけど?」
「それは仏教の礼拝施設となる」
「クリスマスって銘打って蓮二と過ごしたよ?」
「それはキリスト教の行事だな」
「日本人って変だね」
「今更だろう。仏教と神道は歴史的背景、クリスマスなんかは商戦と言った方がいいかもしれないな」
「商戦に踊らされてる自覚はあるけど、私自分が無宗教だと思ってた」
「日本人の7割が自称無宗教だと言うが、神社への参拝や御札、御守りの購入が神道という宗教の一部である認識がないだけだろうな」
「私もない…なんか並ぶの馬鹿らしくなってきた」
「そんなに寒いのか」
「蓮二、会話繋がってないよ」
「さっきからの日本人の宗教についての八つ当たりは、単に寒さからの苛立ちだろう」
「…うん。なんか寒すぎてココア飲みたい気分」
「この時間だとファミレスくらいしか開いてないが…」
「ドリンクバーでもいいよ」
「ふ…ならそうしよう」
「でも、いいのかな」
「ん?」
「途中で参拝の列から抜けるって、なんか罰当たりっぽい?」
「たとえそれが罰当たりな行為だったとしても、それも神道においての解釈だ。何を信仰するかによって変わってる来るかと思うが…無宗教だというのなら、己の思うままに行動しても問題はないのでは?」
「…蓮二ってたまに寛容過ぎてびっくりする。それって博識ゆえなの?」
「それについては自覚はないが…どうする?」
「ココア。それと、」
「甘いものも食べたい、とお前は言う」
「…まだ言ってない」
「だが違わないだろう」
「でもこんな時間に食べたらそれこそあの…なんだっけ、ソフトクリームお化けの…」
「ビバンダムか」
「そう、それになる」
「一食くらい問題ないだろう」
「じゃあビバンダムになっても蓮二のせいだからね」
「あぁ、構わない。どのみちお前の体つきを見るのは俺だろう」
「…なんでそういこと真顔で言っちゃうかな、はず」
「恥ずかしい、とお前は言うが、嬉しく思っている確率92%」
「うるさい。早くココアと甘いもの、行こうよ」
蓮二がいいなら、もうなんでもいいや。
柳と初詣未遂
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なんか色々混ぜすぎた。