◎書いてみたい人魚姫パロの設定メモ
◎っていうかあらすじ的
◎無駄に長い





口がきけない、声が出ない。私には問題ないと思った。



たくさんの姉達に囲まれた末っ子である私は社交性あるいは対人においての積極性も一番下だと言われていたし、自覚もあった。私が声を発する時と言えば、誰かに呼び掛ける時と疑問系で語りかけられた時に答える程度。自ら言葉を発することは殆どしたことがない。それでもこの年までそのスキルを身に付けようとしてこなかったのは、簡単な話、困ったことがないからだ。言葉を伝えなきゃと強く思ったことがないのだ。活発的で家からよく出掛ける姉たちとは対照的に生まれてからの月日を殆ど家の敷地で過ごした私。あたたかな両親と代わる代わるに出入りする姉たちは私を大層可愛がってくれて、人魚関係が上手くいかなくては傷つくだけだろうとあまり家から私を出したがらなかった。だから私は家族しか知らない。声を発しなくても表情や瞳、雰囲気からだいたい私が何を思っているかわかるという両親と姉たち。故に言葉を強いられることはなく、生きてきたから。だから陸を…歩くと、言うんだったか、そのために人間の足を求め、魔女から提示された交換条件を飲むのはさほど抵抗はなかった。例えそれが、命を賭けた取引でも―――。


美しいものを見せてあげると姉たちに連れられ、海面へと浮上したある夜。天空を彩る花火という光ではなく、私が目を奪われたのは船上の人間だった。難破船と共に沈んでいた彫刻のように整ったその人。水面を見詰める儚げな表情に、今までに感じたことのない感覚を覚えた。次第に荒れ出した海にその人が乗っている船が飲まれ、姉たちの制止も耳に入らずその人を砂浜まで運んだ。私にとって幸い、意識はなく、けれど息はあった。人魚は人間に見られてはいけない。思い出した法が頭を駆け抜け海へと戻った翌日に、魔女の元へと向かった。もっと、彼の近くに。彼を知って、私を知ってもらいたい。その思いを胸に足を手に入れて、運よくその彼に拾われたはいいけど…。



声がないと言うのは、こんなにも不便なことなのか。

家族が誰もいない状況、私を読み取ってくれる人なんていなかった。言語は共通だけれど、人間と人魚の文字は異なるから筆談も意味をなさない。
どうにかなると、思っていた。でもならない。身振り手振りで伝えるにも、彼の意識を私に集めなければ理解に届かない。彼は私を気にかけて近くにおいてくれるけど、半歩後ろにいるだけでは意味がない。用があっても後ろから見詰めるだけじゃ気付かれない。彼の視界に移動しても用があるとは伝わらない。呼び掛けることの代用は、触れなければならいと知った。彼の腕を小さく引けば、「どうしたんだい?」と私の理解に努めてくれる。ジェスチャーの前に、“私は”と言う前提を彼に示さなければいけなかった。けれど声にすることは出来ないから、常に私から彼に働き掛けなければならなかった。行動ありきの、私にならなくては。

でも上手くいかない。私が姉たちより著しく劣っているもの、それは社交性あるいは対人においての積極性。自分から何かするのは憚られてしまう。だって、したことがない。腕を引くにも伸ばした指に躊躇いが生じて、彼の服を掠めるだけ。

声?元からたいして使わない。言葉?元からたいして使わない。私には、問題ないと思った。使用頻度が低いものなんて、他のものでも代用できる。そんな浅はかな考え、甘かった。甘過ぎた。他のもの。それは私が持ち合わせてない積極性にあたると気付いた時には、もう。



声はない。積極性を欠いては存在すらないものになってしまう。

私は、なんの為に陸に来た?なんの為に彼の側に?
このままじゃ、いけない。何も伝えられなくても、私を知ってもらえなくても、この想いだけは届けたい。私が泡になる前に、それだけは。それだけは貴方に伝えなくちゃ、後悔しきれないの。ねぇ、何をすれば伝わりますか。どんな行動をすれば、“好き”を表現できますか。



人魚姫の恋



――――――――――――
前半は人形みたいに意思表示的行動を起こさないヒロイン。次第に行動的になっていく様を、お相手の彼の動揺と共に書いてみたい妄想止まんない。彼が誰かは愚問ですよね。でもやっぱり人魚関係って変だな。

「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -