『募集 傭兵 男性のみ』
『急募 男性』
『腕に自身のある男性の方』

何処へ行っても何処へ行っても掲示板には男性のみという言葉。
女性を募集しているところもあったけど、男性に比べると報酬も少なかった。
自分は腕っ節なら自身がある。旅をして戦い慣れていたからだ。…だからこそ、女性分の報酬では満足できなかったのだ。

だったら…
考えて考えて…、私は黒いマントに身を包み、男の格好をして仕事をすることにした。
何故私がここまでお金にこだわるのか?…簡単なことだ。
自分には住む場所がないのだ、明日を生きていくだけで精一杯だった。だから、お金が必要だった。

宿をとり、そこに寝泊りする。長期間借りる手続きをしたら、多少は安くなる。ありがたいシステムだった。
ストラタで依頼を受けて、仕事をこなし報酬をもらう。半年間、この繰り返しだった。


「はあっ!」

ユ・リベルテ近くの砂浜に出現した魔物の最後の一匹を倒して、汗を拭う。
それにしても、最近は魔物が多くなったな…。そのお陰で仕事もたくさん貰えているのだけれど。
だけど、まだまだ足りない。
自分が生きていくのでいっぱいいっぱいだ。

私には目標があった。
船を買うことだ。

何もすることがない今、自分に何が出来るか?そう考えて、考え抜いた結論が…父親のあとを継ぐことだった。それが自分にできる唯一のことだったから。
かつて自分が暮らしていた船は沈んでしまった。
船員は一人も居なくなった。だから私は一人で資金を集めなければならない。気の遠くなるような話だったが、だけど私は…どうすればいいか分からなかったから、だからこの道を選んだ。

誰にも迷惑をかけないように、一人で生きていくと決めたんだ。


「これが報酬だ」
「…ありがとうございます」
「それにしてもお前は完璧に仕事をこなすな、次もよろしく頼む」
「…失礼します」

ガルドの袋と、綿を受け取る。綿は後で道具屋に売りに行くか。…そのお金でアップルグミを買おう、確かそろそろ無くなりそうだったような…ドンっ
…誰かにぶつかってしまった。すみません、と謝り立ち去ろうとすると腕を掴まれる。

「…?何か」
「…君はセシリオという者かね」
「ええ」

私の腕を掴んだ細身でメガネの男。…この人、どこかで…

「私はガリード・オズウェルという者だ。君はいい仕事をすると聞くが」
「…お褒めの言葉、ありがとうございます」

オズウェル?…もしかして、ヒューバートの養父?でも私は、何でこの人見たことあるんだろう…。…まあいいや。

「それで、何かご用ですか?」
「ストラタの大輝石の周りで作業をしていた者たちと、連絡が急に取れなくなってしまったんだ」
「…、様子を見て来い…という事でしょうか」
「もちろん報酬は弾む。魔物を退治した後に、大統領府へと来てくれ」
「分かりました」
「それと、大輝石までは案内をさせる。西門で待っていてくれ」

きっとこれはストラタ軍直々の依頼なのかもしれない。まあ、きっとオズウェル氏が私を見つけたのは偶然だろうけど。
だけど、報酬は弾んでくれる…か。久々に遣り甲斐のある仕事がきたな。

私は西門へ向かう。大輝石までは行ったことがあるから、案内はいらないんだけど…。でもここで行き方は知ってます、なんて言ったらおかしいから素直に案内してもらおう。

私は手元の槍を見ながら、静かに笑った。



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