ヒューバートに抱きかかえられながら辿り着いた先は、美しい花畑だった。
エメロードはフォドラに自然はないと言っていたが、その言葉とは裏腹に、この場所はエフィネア…いや、それ以上に美しい環境だ。
ただ、どうしても…この場所に対しての違和感が拭えない。現に、魔物とふつうの生き物が共存していた。それは、普通では考えられないことだ。…そう、まるで幻の世界のように、この場所は他と切り離されているような、そんな気さえする。



「フォドラの子よ、あなたはわたしと共に来るべきです」


突然聞こえた声に驚き、ヒューバートと共に振り返ると、ソフィの目の前に…リトルクイーンが立っていた。
みんなが驚きつつ、警戒しながらソフィたちに近寄るが、そんな私たちを気にしていないのか、リトルクイーンはソフィに向かって再び話しかけた。


「ひとりになりたくないんでしょう」
「え!?」
「…みんないつかいなくなる。それは、とても悲しい。それは、とても恐い」


ソフィの前にいるリトルクイーンが話し続けている間、私たちの前に彼女の分身が現れ続ける。…彼女たちは、ソフィの前にいる彼女のように、口だけを動かして、私を、私たち皆をじっと見てきた。
その感情のない美しい瞳に、私の視線が絡まる。同時にゾクッと冷たい何かが背中を這った。彼女たちの言葉が、私の心に冷たい影を落とす。


「助けてほしい」
「不安で仕方がない」

「救いを求める心を……わたしが永遠に癒してあげる」


「わたしが、わたしたちが…、あなたの痛みを、わたしに変えてあげる。終わりなき時を、共にゆきましょう」







「永遠に…癒して…」


私がそうつぶやいた瞬間、リトルクイーンは光に包まれ、消えた。
あの言葉はソフィに向けられたものだったが、それでも、私は…私は、救いが…「ソフィ、しっかり!」

シェリアの声で我に返る。見ると、花畑の上に沈むように、ソフィが膝をついていた。
暫くの間無言続いた。それから、ぽつりぽつりと、ソフィは話を始める。


「わたし、知ってるんだ。あの子の事……」
「え…?」
「あの子も、わたしの事を知っていた……っう、うう…頭が、痛いよ…!」
「シャトルまで戻って、ソフィを休ませよう」
「……ううん、戻らない。もう一度会わないと。…この先で、待ってるの。お願いアスベル、あの子とお話がしたいの。あの子の言ってた言葉が、気になるの…」
「分かった、行こう」
「待ってくれ」


話の流れを切るように、リチャードが静止をかけた。その瞳は、私の方を向いている。


「名前はシャトルで待機するんだ。…この状態の彼女を連れ歩くのは危険だからね」
「そうだな、行先は森だ。もしかすると迷うかもしれないからな」
「私は…大丈夫だよ」
「あんなにひどい怪我したのに何を言ってるの!私もリチャードに賛成よ!」
「でも、いくらサイがいるとはいえ怪我してる名前を一人にできないよ〜」
「ならばぼくが「いいや、僕が残るよ。少し、名前と話をしたいことがあるんでね」……そう、ですか」


ヒューバートの申し出を遮ったリチャードの顔はどこか、怒っているようにも見えた。
とりあえず、私とリチャード以外のみんなは森の奥へ行ってしまった。…ヒューバートから受け取った私をリチャードは抱えなおしてくれて、そしてシャトル付近まで連れてこられた。
やっぱり、リチャードの顔は怒っているように見えた。





20120915



「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -