先ほどの部屋を出たと同時に、地面からたくさんの光線が噴出し始めた。もし当たってしまったら怪我どころではすまないだろう。…これも、リトルクイーンがやっているのかな…。ソフィには好意的に接してきた彼女…。目的は何なのだろうか。
とにかく、私たちは急いで来た道を戻った。
途中、ロックのかかった扉などがあって思うように戻れなかったけど、何とかシャトルのある場所まで辿り着いた時だった。後ろから魔物が襲ってきて、私の足に噛み付いた。
「っあ!」
「名前!」
いち早く気づいたリチャード、そしてアスベルとヒューバートが私の足に噛み付いた魔物を追い払ってくれる。
激痛が走る足。見るとブーツの上に牙が刺さっていた。
「ぅ、あ…」
「名前!とにかくシャトルに行こう!手を出して!」
リチャードに手を差し出されるが、私はその手を取るのを一瞬だけ躊躇ってしまった。
ここで、死ねたら楽になるかもしれない……なんて事を考えていたら、痺れを切らしたリチャードが私の足に手を回し、それから抱き上げた。
「名前…!まずいわ、早く治療しないと!」
「牙は抜くか?」
「待って、いきなり抜いたら血が止まらなくなるかもしれないわ!」
痛みのせいで視界がぼやける。
するといきなりシャトルが浮上し始めた。下で魔物と戦っていたアスベルが何とかシャトルに乗り込んだのを確認して、パスカルがシャトルの舵を動かし始めた。
シェリアとソフィが急いで私に治癒術をかけてくれる。
「名前…!」
「…牙を、抜いてみましょう。名前、痛むかもしれないけどすぐに回復を始めるから…心配しないで」
「っ、あ…うっ…う゛あああっ!」
シェリアが牙を抜いたと同時に激しい痛みが足に広がる。
情けないことに涙が出てきた。痛みにもがく私の足を押さえて、シェリアがアスベルに叫ぶ。
「ばい菌が入るとマズいわ。アスベル、私のバッグから水が入ったボトルとガーゼと包帯を取り出して!」
「分かった!」
アスベルから水を受け取ると、私のブーツを脱がせて傷口を中心に一気に水をかける。
それから治癒術をかけると、ガーゼを当て、そして包帯を巻いた。
「アップルグミを食べさせてやれ。幾分か楽になるかもしれない」
「名前、口、開けて?」
ソフィにアップルグミを食べさせてもらい、マリクさんの用意してくれた簡易の寝床まで運ばれる。
すると、ソフィが何かに気づいたように立ち上がった。
「パスカル!急いで!まだ終わってない!」
「え?」
だが、そんなソフィの叫びは虚しく、シャトルが揺れ始めた。
「名前!」
ヒューバートが私の身体を包み込んで、衝撃を少しでも和らげようとしてくれる。
シャトルが前方に傾いたと同時に、音を立てながら落下していった。
「っ…名前、大丈夫です、か…?」
「ヒュー…」
ヒューバートが支えてくれていたおかげで、先ほどの怪我より酷い怪我を負うことはなかった。
どうやらヒューバートも無事のようだ。
彼に抱えられて、私たちはシャトルの外に出る。
すると、皆も少しだけふらつきながら外に出てきた。…ここは…
見回す限り、花だらけだった。なんだか、ラントの裏山を思い出す。…けど、何だろう…この違和感は。
すると、シャトルの様子を見ていたらしいパスカルがこちらへやってきた。
「シャトルの様子はどうだ?飛べそうなのか?」
「すぐには駄目っぽい。サイが直してくれてるけど、時間はかかると思う」
「……あの子が、わたしを呼んでる。こっちに来いって言ってる」
ソフィはそう言うやいなや走って森の奥へ行ってしまった。
アスベルたちも慌てて彼女を追いかける。勿論、私もヒューバートに抱き上げられているので彼と共にソフィを追いかけることになった。
20120307