人はいつか亡くなる。「その日」は人であれば必ず、訪れるもの。
そんなこと、分かってる。分かってる。だけど、私は…大切なものをあのタイミングで失うなんて、思っていなかった。

…人はいつか亡くなる。だけど、私にはソフィみたいに考える時間なんて無かった。
自分は失ってから、気付いてしまった。当たり前なんて、すぐに崩れ去ることを。




「名前…?」
「…リチャード」
「こんな所でボーッとして…、どうしたんだい」
「…ふふっ、何でもないよ」


テロスアステュでの情報収集。魔物もいなくなったので、単独で情報を集めていた時だった。
ふと、アンマルチアの里でのソフィとアスベルの会話が脳裏をよぎった。自分は自分、人は人なのに…どうして、比べてしまうのだろう。

あの日まで、私はいつもと変わらない日常がずっと続いていくものだとばかり思っていた。…それが、かけがえのないものと知らずに、ただただ過ごしていくだけだった。突然訪れた不幸。後悔をしても、遅い。何も変わらない。…じゃあ、私のこのやるせない思いはどうすれば良いんだろう。



「…名前、何かあるのなら話したほうがいい。…僕たちは…」
「…わかってる。仲間だもんね」
「……」


リチャードは、私のことを心配してくれる。…あの旅が終わった後、彼は私に「好き」と言ってくれた。…ヒューバートだって、私に「好き」と言ってくれた。彼らには悪いけど、それに答えることが出来ないくらい…私の頭はぐちゃぐちゃだった。



「…名前、君は…」
「それにしても、フォドラって…本当に寂しい所だね。昔は栄えてた…なんて、ちょっと信じられないかも」
「…そう、だね。でも、これだけ大きな建造物があるんだ。…それも、大昔に作った。…これは、すごい事だね」


大昔にこれだけの物を作ったフォドラ人。…テロスアステュを造った人たちは、フォドラが滅びることになるなんて…知らなかったんだよね。
フォドラで暮らしていた人は、ここで暮らすことが当たり前だった。…だけど、結果はこれだ。

形があるものは、いつかは消えてなくなってしまう。
私だって、隣にいるリチャードだって…いつかは消えてしまうの。アスベルが言っていた通り、それは遠い未来なのかもしれないし、もしかしたら今日なのかもしれない。誰にも分からない、未来。仲間たちは、未来のために脅威を取り除くと言っているけど…そんな不確定で不安定な未来に、希望なんてあるのだろうか?

私は、自分の未来が予測できない。この旅が終わって、人々の未来が安定したとしても…。私自身…それからどうすればいいのかわからなかった。未来が、怖かった。





「名前、リチャード!」

すると、自動のドアが開いてアスベルが駆け込んできた。



「どうしたんだい、アスベル」
「いいから来てくれ!パスカルがフォドラに関する情報を見つけたんだ」
「ああ、分かったよ。名前、行こう」
「……あ、うん…」
「……」


アスベルとリチャードに着いていく時も、ずっと…私の頭の中はごちゃごちゃで。
また、私の「一人で思いつめて暴走する」悪い「癖」が出ていることなんて気付かなかった。それに気付いていれば、みんなを…リチャードを危険な目に遭わせることなんて、起こらなかったのに。





20111023




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