少しだけ眠かった私の頭は覚醒した。
声のしたほうを見ると、右手を震わせている染岡と、私をからかっていた男の子達。
女の子達はそれを遠巻きに見てコソコソと何かを話している。

「なんだよ、染岡!とろいやつの悪口言って何が悪いんだよ!」
「うるせぇってんだろーが!」
「なんだよ染岡!あー、まさか苗字がすきなのか?」
「そういえばこいつらいっつも一緒にいるよなー!ラブラブー!」
「ラーブラブ、ラーブラブ!」

いつも一緒にいるといえば、半田もなんだけどな。
なんて思いながら、まるで他人事のようにそれを見る。すると染岡が口を開いた。

「名前は俺の大切な友達だ」
「え…」
「自分の友達を傷つけられていい気分なワケねぇだろうが!お前も、そこのお前も!お前らも!今度名前をいじめたら、ただじゃおかねぇからな!」

染岡がそういうと、男の子達は静かになった。染岡に睨まれた女子も静かになった。
きっと、からかわれて顔を真っ赤にして怒る染岡を想像していたのだろう。
だけど染岡は怒りはしたけど、これ以上何かを言うことは無く、私の手を引っ張り教室から出て行った。

今考えると、小学生男子は「ラブラブ」なんて言われたら、例え好きであっても「こんな奴、好きなわけあるか!」とか言いそうなのに、染岡は違った。
染岡は私を傷つけずに、庇ってくれたのだ。守ってくれたんだ。
それを幼いながらも私は感じ取ることができた。染岡に手を引っ張られながら、自然と笑顔になるのがわかった。

それから、私は染岡竜吾にベッタリくっつくようになったのだ。






小学校最後のクラス替え。
私たち3人は運よく同じクラスになることができた。
そういえば私に、染岡と半田以外の友達もできたんだよ。
あの事件(事件といっても大したことはなかったんだけどね)の後、女の子達が私のところに謝りに来てくれた。今までごめんねって。私は怒ってなかったので、「大丈夫だよ」と言った。

周りもだんだん私のこの性格を理解してくれて、今では授業中に寝ていたら起こしてくれたり、教科書忘れたら見せてくれたり、私が寝ていた授業の板書ノートを貸してくれたりする。
今ではクラスのみんなにお世話されているようなものだった。なんだかそれはそれで微妙だけど、でもよかった。友達いらないとか言ったけど嘘。今ではとても楽しい学校生活を送ってるよ。
あ、もしかしたらこの辺からだったかもしれない。私がぐだらーって呼ばれだしたのは。違うクラスの子からもぐだらーちゃんって呼ばれたりする。私はちょこっとだけ有名になってた。それくらい、みんなが私に構ってくれるのだ。


そういえば、私サッカーも中々上手くなりまして。
休憩時間も男の子達は嫌な顔一つせずに私をメンバーに加えてくれるようになった。
これも、半田と染岡と一緒に入ったサッカークラブのおかげだ。

あと、休憩時間には染岡のひざの上に居ることが多くなった。
私が抱きついたら、最初は照れくさそうにしていた。けど最近は慣れたみたいで何も反応しなくなったんだけどね。
染岡は体温が高いから、いつ抱きついても温かくて。それに染岡と一緒にいると安心できるから、染岡の膝の上は寝るのにはとてもいい環境だったりする。
たまに半田に抱きつくけど、体系が同じくらいだから半田が支えきれなくなり転倒することがしばしばある。だから、極力染岡に抱きつくことにしている。


こうして、私のぐだらーな日々は始まったのだった。




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