名前は今携帯でムービーを撮ることにハマっていた。
パステルカラーの携帯を構えて俺たちのほうに向ける名前。準備は万端なようだ。


「染岡、なんか楽しいの」
「あ?…そんないきなり振られてもな…」
「半田は?」
「え、あー…んー…」
「……くーすけは?」
「おっけー名前、見せてあげるね」


名前の突然の無茶振りに何も出来ないでいると、マックスが立ち上がった。名前にウィンクをしてみせ、ポケットから取り出したのはお手玉だった。…なんで持ってる。
とにかくその色とりどりのお手玉5つを器用に投げる姿は曲芸師顔負けレベルで、名前は興奮しながらそれをムービーに収めた。


「くーすけすごいすごい」
「でしょー。何も出来なかった半田とボク、違う?」
「違う。くーすけと半田違う」
「何で俺だけ名指しなんだよ、染岡はどうした染岡は!」
「やだなあ半田、染岡は用意するのに手間取っていただけだったんだよ。ね、染岡」


マックスの無茶振りに一瞬反応できなかった。はぁ、と俺は溜息をつくとペンケースからシャーペンを取り出す。


「おら名前、しっかり見とけよ」
「おう染岡」
「名前、汚い言葉を使うなよ」
「あいあいさー」


全く、覚醒している時の名前は本当にテキトーだな。じと目で名前を見るオカン半田に笑いつつ、俺は利き手でそれを回した。
するとあがる歓声。どうだ、俺にも人より得意なことはあるんだよ。授業中に会得したこの高速ペン回しを見よ。

ぴろ〜ん、と間抜けな音が鳴る。それと同時に興奮した様子の名前が俺とマックスに抱きついてきた。



「すごい二人とも」
「でしょ〜、どこかの半端とは全然違うんだよ〜」
「半端って言うな!」
「じゃあ半田も何か得意なこと見せてみなよ」
「うぐっ」
「名前に喜ばれなかったのはお前だけだぞ」
「ぐうっ!」

マックスに悪乗りして俺も半田をからかってみた。すると半田は少しだけ考え込んだあと、指定鞄の中から何かを取り出した。
見ると、リコーダーのようだ。


「名前、俺も見せてやるよ」
「半田リコーダー?」
「ああリコーダーだよ、リコーダー。しっかりムービーに収めろよ?」


名前がムービーを起動したと同時に半田は後ろを向いて、それからぴろぴろとリコーダーを吹き始めた。…ぶっちゃけ全然上手くない。


「はぁ?こんな駄目演奏でよく得意なコトって言えるね」
「いや、これからだ」
「はぁ?」


リコーダーを吹きながら喋る半田。…いや、ちょっと待て。リコーダーを吹きながら何で喋れるんだ?そう思って半田を見た瞬間に、隣にいたマックスがぶはっと噴出した。


「どうだ、鼻息でリコーダーを吹く、だ!」


ドヤァ


そんな効果音がつきそうなくらいのどや顔をして、半田が鼻にリコーダーを当てた姿で俺たちを振り返った。
ぴーぴろ、ぴー虚しく、半田の鼻息によって鳴らされるリコーダーの音が響いた後に、マックスに続いて俺と名前が噴出した。




うん、実にくだらん!



20120104





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