ぽたぽた、くるんくるん、ぽたぽたぽた
お気に入りのオレンジ色の傘をくるくる回して、今日のぐたらーは少しだけ活発的だ。
そんな名前の様子を、染岡と半田は後ろから笑顔で見守る。
「あいつ、雨の日はテンションが高いよな」
「染岡。なんでテンション高いか、聞いたことあるか?」
「知ってんのかよ」
どうやら染岡は名前が雨の日になるとテンションが高くなる理由を知らないみたいだ。少し優越感に浸りながら、半田は喋り始める。
名前と雨の日
小学生五年生の頃、染岡少年と半田少年は悩んでいた。
なんと、人生で初めてバレンタインチョコレートを家族以外から貰ったのだ。もちろんそのお相手は、ぐだらーこと名前。お母さんと一緒にチョコレートを手作りしたらしく、綺麗にラッピングされたそれを、染岡と半田に渡した。
染岡も半田も、当然嬉しかったが、同時にとても悩んだ。お返しは、何を渡せばいいのだろうか、と。
小学生のお小遣いなんて、たかが知れている。それに、女の子が喜ぶものなんて分からない。二人は相談しあって、それからお金を出し合いプレゼントを買うことにした。
だが、百貨店に行ってみたのは良いが、何を買えばいいのかわからない。途方にくれていたところで目に飛び込んできたのは、一つの鮮やかなオレンジ色。その綺麗で暖かい色が、名前の笑顔と重なった。すぐにそれを二人で購入し、そして翌日、名前にそれをプレゼントした。
「あの傘、俺たちが初めて名前にあげたプレゼントだろ?傘って雨の日にしか使えないから、雨の日が嬉しいらしい」
「はあ…なるほどな。…にしても、あいつそんなに嬉しかったのか」
「俺たちがなんであの傘を選んだのか、教えてあげた事があるんだよ。きっとそれが嬉しかったんだな」
「なんか…あそこまで喜んで貰えたら、こっちも嬉しくなるな」
「そうだな」
ぽたぽた、くるくる、ぽたぽたぽた
傘を回すと、たくさんの笑顔が降ってきたよ。
20111122