部活が休みの日曜日。染岡が家に遊びに来いと言ったので、半田のチャリの後ろに乗っていざ染岡ホームへ。
染岡の家は一軒家で染岡そっくりなお父さんと背の高い優しいお母さんと大学生のお兄さんと高校生のお兄さんがいる。あと犬のケン。ケンは小学二年生の時に染岡が河川敷で拾ったんだよ。あの頃のケンは小さかったのに、今では立派な大人。染岡家の影響なのか凛々しい顔つき。…飼い主に似るって本当なんだね。

「着いたー」
「ありがと半田」
「いいえ、どういたしまして」

染岡家の自転車置き場に自転車を置かせてもらって、チャイムを鳴らすと黒のタンクトップを着た染岡が出てきた。うっすらと汗をかいている。今日ってそんなに暑くないよね。半田だって長袖だし…私もカーディガン着てるのに。首を傾げていると、染岡が庭の草むしりやってたんだよ、と教えてくれた。半田も染岡も長い付き合いのせいか私の言いたいことが分かるみたいで、あまり喋りたくない私にとっては本当にありがたい。

「昼飯チャーハンでいいか?」
「染岡が作るのか?」
「嫌だったら近所のスーパーで惣菜でも何でも買ってこいよ」
「いや今金ねーし。おばさんいないのか?」
「友達とお食事会だってよ。兄貴たちは部活やらサークルやらで夕方まで帰ってこない。だから俺が作るしかねーだろ」
「染岡の手料理か…、なんか男の手料理ってあんま食いたくない…」
「殴るぞ半田」
「…そういや名前は料理作れない「無理」…なんで今日はそんなに反応が早いんだよ」

無理なものは無理だ。料理作るのは自分には合っていない。順を追って作業をするのが苦手な私。材料を量るのが苦手な私。イコール料理は向いていません。無理なのです。

「そういう半田はどうなんだよ。俺の手料理が嫌なんなら材料くれてやるから自分で作れよ」
「え…俺作ったことない。調理実習とかいっつも皿洗いしかしてなかったし…」
「まあ班に女子がいるかぎりやらせてくれないけどな、調理は」
「汚い手で触るな!とか男子は皿洗いだけしてればいいんだよ!とか?」
「ああ」
「でもまあ皿洗いしてりゃ美味いもの食えるし、楽っちゃ楽だよな」
「まあな」

調理実習は私も食べる専門だなあ。調理実習時間はずっと寝てたし。良いにおいがしてきたら目が覚めるんだよね。で、班のみんなにぐだらーちゃんどうぞって言われて食べて…。ううーん、改めて考えると嫌なやつだね私。まあいいけど。

「つーかもういいや。染岡のチャーハンでいいや」
「マジで殴るぞ半田」
「染岡さまの手料理が食べたいですお願いします哀れな半田めに染岡さまの手料理をどうかお願いします」
「…はあ。名前もチャーハンでいいか?」
「うん」
「じゃあ待ってろ、すぐに出来るからな」

染岡は私の髪をくしゃりと撫でると、キッチンの方へ向かっていった。
そんなくしゃりとなった髪を元通りに戻してくれる半田。

「ありがと」
「いいえー。昼飯できるまで暇だな。何する?」
「んー暇な時は寝るのがいい」
「あー…まあ名前はそれが一番いいよな」
「半田…」
「はいどうぞ」

半田が手を広げてくれたので、そこに飛び込んでくっつきながら眠る態勢。人にくっついていたほうが良い気持ちで眠れるんだよね。半田は染岡と違って柔らかいから気持ちいいんだよね。
あー…眠くなってきた。半田が優しく頭を撫でてくれるので、それも相俟ってだんだん眠りの世界へ…









「ほら名前、腹減っただろ。起きないとお前の分のチャーハン食うぞ」

美味しそうなにおいと染岡の意地悪な言葉で目が覚めた。
時計を見ると半田にくっついて寝始めてから20分経っていた。半田の服を見ると、どうやら握って眠ってしまっていたようで皺になっていた。ごめん。
半田と共に起き上がると、細長いテーブルの上にチャーハンが3つ置いてあるのが見えた。

「飲み物何がいい」
「何があるんだよ」
「茶に水にアクエリに…牛乳に…黒酢」
「何最後の」
「いや、お袋がダイエットにいいとかで毎朝飲んでんだよ」
「はー…じゃあ俺アクエリ」
「名前は」
「お水」
「おー」

透明なガラスコップにアクエリアスとお水とお茶を注ぐ染岡。みんなバラバラだなー。
それをチャーハンと同じくテーブルの上に置いて棚からスプーンが入った丸い入れ物を取り出しテーブルに置く。
その間に私は半田に連れられ手を洗いにキッチンへ向かう。手を洗ったら私は染岡の隣、半田は染岡の向かい側に座った。

「染岡の料理はじめて」
「そうだな。いつもお袋が作ったやつだったもんな」
「おっ、中々美味そうじゃん」
「お前嫌がってたよな」
「まーそれはそれ」
「意味わかんねー。ま、冷める前に食ってくれ」
「いただきます」

スプーンですくって一口口に入れる。…美味しい。半田も私と同じ事を思ったようで、少しだけ目を開いて驚いていた。
染岡はそんな私たちの反応が気になるようで、私たち二人をチラチラと見てくる。

「染岡、料理の才能あるんじゃねーの?」
「美味しいよ」
「そ、そうか!口に合うようなら何よりだ」

そっぽ向く態度とは裏腹に染岡の頬が少しだけ染まっていたのを見て、私と半田は密かに目配せして笑いあった。


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