オズバルドを倒し、後はマティウスのみ。
…階段を上っている途中、ルカとリカルドさんが話をしているのが聞こえてきた。


「感傷にひたっている場合ではない。…今はマティウス戦に集中するだけだ。泣いたり、叫んだりするのはその後でも出来る」


リカルドさんのその言葉を聞いて、再確認する。
全ての始まりは創世力だ。マティウスが使ってしまえば、大切な人が亡くなって悲しむ人がもっと増えてしまう。
私たちにしか出来ないのだ。…後で、思う存分悔やめば良い、悩めばいいんだ。

…よし。私はもう一度自分の武器を握りなおす。槍…前世の自分、お兄ちゃんと一緒の武器。…大丈夫だ。絶対に大丈夫。だって、私には仲間がいるから。








「出来ない…、私には出来ません…」
「愚か者!お前以外の何者がかなえられるのか!さあ、早く!」
「駄目…、無理、です…」
「あの女の声…」


最上階間近、聞こえてきたマティウスとチトセさんの声に私たちは顔を見合わせる。
そして声のした広間に急いで向かった。

創世力を前に、マティウスと少し怯えた様子のチトセさんがいる。
私たちが入ってきたことに気づいたマティウスが、焦りながら声を荒げた。




「さあ、邪魔が入った。今のうちに私を殺せ!そして創世力に世界の破滅を願え!私を愛しているというのなら…今こそ示してみよ!」
「…あ…愛して、います。…でも…」
「あんた、なりは女だけど、全っ然女心、わかんないヤツね!」
「ホンマや…、残酷なヤツやで」
「そうよ、チトセさんは貴方に愛されたいだけなのに。ほんのわずかでも…」
「誰かを好きになるというのは、軽いことじゃないのよ!」


女性陣がそう言うと、マティウスは鼻で笑いながらチトセさんを見る。


「知った事か!勝手に私に惚れて、そして同じように愛せ、だと?過分な要求ではないか。ならば私に気持ちを示してみよ!」
「馬鹿な…。君には人の心がないのか?そこまで世界崩壊を望むのは何故だ!」
「理由など要らん!私がただ在る限り、世界は滅ばねばならないのだ!」
「…何を言おうが無駄のようだ」
「ああ、まったく同感だぜ。こういう手合いは、ぶっとばさなきゃなンねェな」
「貴様等如きに止められるか?天を統べし魔王の力の前には貴様等なぞウジ虫にも劣る」
「……。君のその物言い、不快だね…。…僕にはイリアがいた。イリアが不愉快だって指摘してくれた」
「それがどうした。命乞いなら聞かんぞ」
「それはこっちのセリフだよ。僕は君を倒す。君がいると、アスラとイナンナが浮かばれないんだ。二人とみんなのために…倒す!」
「そ〜よっ!もう前世なんてウンザリ!これで、決別よ!」
「もう、身も蓋もないなぁ…イリアったら…」
「文句なら後で聞いたげる。とりあえず、用事を先に片付けちゃわないとねっ!」
「オレは剣だ。そしてコイツらを守る盾…。役目を果たせば制することができる。…ヘッ、な〜んだよ!バルカンの想いもハルトマンの教えも大差ねェ!草葉の陰で見てろよ、バルカン!」
「これ以上、大切な人がいなくなって悲しむ人が増えないように…。私はあなたを倒す!」
「自分もアスラやってんな。知っとったらもうちょい優しくしたったのに…。でも、もう遅いで?おイタが過ぎたみたいやからな、尻叩きでは済まされへんで?」
「あ、そうそう。終わったら美味しいものでもみんなで食べに行こうね。…だから、みんなケガしないように。わたしと約束よ?」
「…フ、みな戦意が高いな。これなら負けるはずがなかろうて」
「っ、くたばれ!この雑魚どもめが!」




マティウスから力があふれ出ると、その体が変化した。
アスラとイナンナを融合させたような姿に、少しだけ悪寒がする。だけど、負けるわけにはいかない。



「天地のみんなのため…、僕らは負けない!」



それぞれの武器を構え、それぞれの思いを胸に抱え、私たちはマティウスに向かった。






20120205







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