「みんな、ごめんなさい!」


あの後、皆の前で全てを打ち明けた。
グングニルはゲイボルグの狂気の素材で作られていたこと、そして本来のグングニルの使命…イナンナの愛の祝福…イナンナを守る愛情で満ち溢れた、二つの使命を背負った槍だということ。
前世ではデュランダルと出会う前に人を見境無く殺していたこと、だが彼と出会ってからはそれが全く無くなったこと。グングニルは愛と狂気で出来ているかのようにその双方に対しての感情が極端だったこと。そして、そんな前世の影響を少なからず自分が受けていることを話した。

全てを話し終えると、アンジュ姉さんがふわりと笑いながら、私の頭を撫でてくれる。


「話してくれて、ありがとう」
「姉さん…」
「ああ、思い出した。イナンナが子供の頃、夜中に目を覚ましたらたまに傍に置いておいたはずのグングニルがいなくなってることがあったわ!…そういうコトだったのね」
「…ずっと黙っていてごめんなさい」
「あー、良いって謝らなくて!…それにしても、デュランダルの愛で狂気が無くなった…ねぇ」
「今はスパーダ兄ちゃんの愛で、やけどな」
「…それで、お前は旅を続けて大丈夫なのか?」
「…はい」
「根拠は?」
「オレがいるだろ、オッサン。さっきエルが言った通りだ。オレがこいつを守って、与える」
「先ほどのように刺されるかもしれんのだぞ」
「ちょっとリカルド、そんな言い方は…!」
「…それ以上にこいつを愛する」
「…!」
「それじゃ理由になんねぇか?」
「……フッ、言うようになったな、ガキ。…ただし、何かあっても俺は何もせんぞ?その辺りは契約外だからな」
「わーってるよオッサン」
「…ありがとうございます、リカルドさん」
「フッ」


リカルドさんは微かに笑うと、すぐに手元にあったコーヒーに口をつけた。


「それで…記憶の場のことなんだけどね、…ナーオスでリカルドさんと出会ったときにわたしを探していたというお貴族さまのお話を聞いたでしょう?」
「確か…アルベール、だったっけ?」
「ええ、その人の先鋭部隊というのが、町の東のほうから帰ってきたらしいの。戦場でもない遺跡に軍隊が向うのは、少し奇妙なことよね」
「僕たちは何かを探っているんじゃないのかなって思ったんだ。食べ終わったら出発しようって思ったんだけど…二人は良いかな?」
「そういうことなら、もちろん」
「体調も回復したし、俺も行くぜ。遺跡ってんなら記憶の場もありそうだしな!」
「じゃあ食べ終わったらレッツゴー!やな!」
















雪深い道を進んでいくと、巨大な遺跡が見えた。
神待ちの園と呼ばれているそこは、大地母神…すなわち豊穣の女神を迎える地として作られたらしい。


「寒っ!風ビュービューや!」
「ホントに信仰の中心地?そうは見えないけど…、なんだか物悲しい…」
「のんびりしてらんねーな。アルベールとやらが向かってんだからよ」
「そうだね、早く探索を済ませよう…って、名前?どうしたの?」
「ひぇ?」
「え?」
「いや、な、なんでもないよ!あはは(腰が痛いなんて言えない)」


とにかく奥地に進むことになった。



「やはりアルベールはここを目指しているのだろうな」
「そうだろうね。でも、本当に創世力を探っているのかどうかわかんないけど」
「俺を雇い、セレーナを探させたのは、創世力を求めての事だろう」
「そうでもなきゃ、見ず知らずの他人を、人を雇って探させたりしないだろうしね」
「…あっ」
「?アンジュ姉さん?」
「…、な、なんでも、ないわ」
「そう…?」
「……」




そう、私は後で後悔することになる。
何故ここで、アンジュ姉さんを追及しなかったのか、と。





20120203






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