スパーダを、刺してしまった。



その事実に、頭が混乱する。ぐったりとしたスパーダから槍を引き抜くと、槍を伝ってスパーダの血が流れてくる。その血を見ると、ひどく興奮してしまう。ああ、ああああ…私は、私は、おかしい。狂っている。
倒れこんだスパーダをリカルドさんが支えて、アンジュ姉さんとイリアが回復術をかける。まるで他人事のように、私はそれを見ている。エルとルカが戸惑いがちにこちらを見てきた。


「名前…き、君は今…」
「姉ちゃん…なんで」
「……」


なんで、と聞かれても…自分でも分からない。ただ、スパーダを刺したかったのだ。何故だか分からない。なんで、大切なヒトを刺さなければいけないのか、理由も分からない。…私は混乱していた。


「さて、名前という仲間を手に入れたことでオレの経験地は50上がったよ!ということでそろそろ血祭りをおっぱじめようかぁ〜」
「な、かま…?」
「狂ったお仲間さぁ。グングニルとゲイボルグ、名前・エクステルミとハスタ・エクステルミ兄妹は狂ったお仲間。まずはぴーぴー喚く煩い鳥たちを狩ろうではないか!」
「…狂…って、なんか、」
「十分狂ってるさあ。ほら、思い出してみて。デュランダなんとかさんを刺した時の快感を…!」
「っ…!」


視界の端に映るは倒れこんだスパーダの姿。
私を守ってくれる、大好きなヒトの姿。彼をこんな風にしてしまったのは、他でもない私。


そう考えると、急に頭が冷えてきた。…あ、あれ?い、いま私…何を…?




ガチャンと槍を地面に落とすと、私はガクリと膝をつく。
ガタガタ震えながら、私は倒れたスパーダを見る。


「あ、あ、あ…スパーダ…スパーダ」
「…おやおや、妹っちはまだまだ覚醒途中でしたピョロか」
「どういう意味だ、ハスタ」
「愛と狂気は紙一重ってことさ、リカルド先生!」
「紙一重…?」
「はい、お時間です。帰ろ」


お兄ちゃんは突然そう言うと、飛び上がり門の上に着地した。
ガタガタ震える私と、それから皆を見ると、再び喋り始める。


「あいつ…何バルドだっけ?…アイツの用事が終わったら、迎えに来るんだぽん」

そう言い残して、お兄ちゃんは門の向こう側へと消えてしまった。


「それで、どういう事だ、名前」
「…っ」
「リカルドさん、スパーダ君が…!」
「…仕方ない。テノスへ急ぐぞ」


リカルドさんはそう言うと、未だぐったりしているスパーダを担いで私の方を向く。


「お前はどうする」
「…、行き、ます」
「…何かあれば容赦はせんぞ」
「リカルド!そんな言い方は…」
「………」
「名前…」


皆が私のほうをチラチラ見ながら、先へ進んでいく。
アンジュ姉さんだけは私の隣にいてくれたけど、会話もなかった。

雪がちらつく、…テノスはもう目と鼻の先だった。




20120203




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