「迷惑をかけてしまってすみませんでした」


翌朝、私は皆の前で頭を下げた。あの後、ガードルさんが追ってきて戦闘になったこと(ガードルさんは転生者でなく、タナトスさん本人だったらしい)そしてそのタナトスさんをグリゴリが殺しにやってきたこと、そしてタナトスさんは海の底に沈んでしまったことを教えてもらった。


「名前が謝ることはないわ。…それより、体調はどう?」
「大丈夫だよ」
「そうか。…ならば、これからどうする」
「…勿論、テノスへ向います」
「大丈夫なのか?船での様子から察するに、マムートには何か因縁があるようだが」
「…」
「ねえ、名前。もし良かったらで良いんだけど…話してもらえないかな?…相談とかも乗れるかもしれないし…」
「ルカくん…それは「いいよ、アンジュ姉さん」…名前」


いずれかは、克服しなくちゃいけなかったんだ。良い機会かもしれない。



「マムートの先にあるレムレース湿原の近くに、私が暮らしていた村があったの」
「あ…」
「アンジュ姉さんが前に皆に話した通り、抗争に巻き込まれて無くなっちゃったんだけどね」
「…」
「一年くらい前だったかな…。姉さんに着いて各地を巡礼する旅に出たの。…当然、マムートにも行った。…だけど、そこで急に苦しくなって…。そう、昨日のような状態になってしまったの」
「その時は、どうしたの?」
「…引き返すことになったの」
「当時、テノスとは冷戦状態だったから無理して行くこともないかな、とは思っていたんだけどね」
「…それで、今回はどうする」


リカルドさんの問いに、私はぎこちなく微笑む。


「大丈夫です。私も連れて行ってください」
「…本当に大丈夫なの?」
「…うん。昔のことに囚われないようにしないといけないって思っていたから、良い機会かもしれない」
「何かあってからでは、遅いぞ」
「…心配いらねーよオッサン。コイツは俺が守ってやるからよ」
「……無理はするな」
「ありがとうございます」


とりあえず支度をして、宿屋の前に再集合した私たち。
進行方向を確認して、目指すはレムレース湿原を越え、戦場を越えた先にある雪国、テノスだ。



「文献調査で得た最後の手がかりね。創世力について、何か思い出せるといいけど」
「とっとと手に入れねーと、色んなヤツに追っかけ回されてウゼェったらないもんな」
「ホンマやで。体持たんわぁ」
「よし、じゃあ向かおう。地上の平穏のために」


ルカの言葉に頷き、私たちはマムートの町を後にした。
マムートからレムレースの湿原までは少し遠い。これから抜ける北の戦場のためにも、体力を消耗しないようにしないと。




マムート近くを歩いていると、昨日見た夢のことを思い出してしまう。
ここの道、よくお兄ちゃんと通ったな。…あの木とか、あの山とか…全然変わってない。



「名前」
「?どうしたの、スパーダ」
「無理してないか?」
「…、全然」
「…何かあるようなら、すぐに言えよ?」
「分かってる。…ありがとう。…あ、そうだ」
「?」
「昨日、ずっと付き添っててくれたんでしょ?ありがとう」
「…まあ、心配だったからな」
「起きた時にスパーダがいてくれて、安心した」
「…そ、そうかよ」
「あれ、顔真っ赤。…照れてる?」
「っ、からかうんじゃねーよっ!」




20120202


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