「ふう、やっと帰ってきたぜー」
「うう〜〜…また酔っちゃった…」
「ホンマ、船酔いばっかりやな。これからまたすぐ船に乗るんやろ?」
「ここで乗り継ぐんだよ。そうだよね?リカルド」
「ああ、その予定なのだが…到着が遅れているようだな」
「あら、どうしましょ。時間潰しでもしておきますか?」
「…そうだな。後でまた港に戻ることにしよう」


リカルドさんがそう言うと、一気にみんなが沸いた。
隣にいたスパーダが嬉しそうに私を見る。


「なぁ、デートしようぜ」
「!!デ、デ…!?」
「あらぁ、それは名案ねスパーダさんったら!」
「着いてくんじゃねーぞイリア」
「あらやだ!そんな野暮なこと…するに決まってるでございましょう!ねぇルカさん?」
「え、え、え…邪魔は駄目だよぉ…イリア」
「はぁ?何でよ!」
「そんなコトよりイリア、コーダに何か食わせるんだな、しかし」
「あーもうどうでも良くなってきたわ。じゃあ行きましょ行きましょ、もちろんルカの奢りでね」
「え…!?」
「え、ルカ兄ちゃんの奢り?ならウチも行くー!」
「コーダはホットドックが食べたいんだな、しかし」
「じゃあわたしも着いて行こっかな。じゃあ二人とも、楽しんでね?」


嵐のように、リカルドさん以外の皆が去っていった。…あれ、リカルドさんは行かないのかな?
そう思い、リカルドさんに聞いて見ると「俺はここで船が到着するのを待っている」だそうだ。


「損な役回りだな、相変わらず」
「大人はガキの面倒を見ないといけないからな。お前らのように自由に楽しめはしない」
「ま、そういうことなら任せたぜ。行こうぜ名前」
「あ、う、うん。…あ、そうだリカルドさん」
「?何だ」
「これ、バナナシフォンです。船で作ったんですが、リカルドさんにだけ渡せなかったので今渡しますね」
「……名前…」
「?何ですか?」
「…いや、なんでもない。ありがとう」
「いえいえ、それじゃあまた後で!」



スパーダに手を引かれながらレグヌム市街地をぐるぐる。
名物のホットドックを食べたりしながら、デートを満喫していた時だった。

「っ!危ねぇ!」

持っていたホットドックを放り投げて、スパーダが私を横抱きにして何かから庇った。…え…
先ほどまで立っていた場所を見ると、そこには銃弾がめり込んでいた。…なに、これ

スパーダが私を庇うように剣を構えて前に立つ。前方にはレグヌム兵士が数人いた。


「チッ、見つかったか…」
「ス、スパーダ…」
「安心しろ、お前はオレが守ってやる」
「…わ、私も戦う!」

そう言って槍を構えた時だった。後方からゆっくりと近づいてくる足音に振り返る。
そこには、私たちに向けてライフルを構えた、リカルドさんの姿があった。


「え、リカルド…さん?」
「…何の冗談だよ、オッサン」
「…悪いが冗談などではない。…連行しろ」


リカルドさんの登場に呆気に取られていた私たちは、後ろにいたレグヌム兵にまんまと拘束されてしまった。
港に連れて行かれると、ルカやイリアたちの姿もあった。…みんな、捕まえられてしまったのだ。


「…あなたは、契約を遵守する方だと思い込んでおりましたが…」
「…どうして?」
「契約より重い物もある、って事だ。これも世の常。あきらめろ」
「理由くらい聞きたいな」
「ガードルという男は、私の兄だった。前世でな」
「タナトス…?」
「死神…タナトス?あの、ラティオを追放された?」
「…そうですか、込み入った事情がおありなのですね。…でも、わたしはまだあなたを信じます」
「……」


タナトス…、リカルドさんの前世、ヒュプノスと同じ死神。確か、職務の中出会った地上の人間と恋をし、天上界を追放された、あの?
ということは、ガードルさんは転生者なんだよね?じゃあ何でガードルさんは転生者をあんなにも憎んでいたの?

ああ、ますます分からないことだらけになった。
するとレグヌム兵の後ろから見たことも無い人がやってきた。


「これはこれは転生者ども。中には久しい顔もいるな」
「マティウス!あんたの仕業ね!」
「(あの人が…マティウス…)」
「仕業、だと?…我が教団の愛する兄弟を傷つけ、その上、適応法による逮捕拘禁中逃亡を行い、転生者の風評を著しく低下させた。…これは重罪だな。よってここでアルカ教団に与えられた権限により、宗教裁判を行わせてもらう」
「宗教裁判ですって!?アルカ如き新興の団体にそんな権限が…」
「娘、お前ならこの名を知っていよう。我等教団は枢密院のお墨付きをもらっているのだぞ?」
「枢密院…噂は本当だったのですね。ならば仕方ありません」
「では、判決だ。貴様らはグリゴリの里にて幽閉させてもらう。命を奪わないのは、同じ転生者としてのせめてもの情けだ」
「同じ転生者…、やはり君は魔王なんだね?創世力を使って、何を企んでいる!」
「フフ、またいずれ教えてやろう。さあ、こいつらを船に乗せろ!」
「っ、きゃ!」
「名前!こんにゃろ、離せっ!」


マティウスがそう命令すると、近くにいたレグヌム兵が私の両腕を拘束する。そしてそのまま引きずられるように船の中に連れて行かれてしまう。
もちろん、ルカたちも私と同じように拘束されてしまった。

そして全員、狭い船室に押し込められた。はあぁああ…これからどうなるんだろう。



20120202





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