―ガルポス
南海に浮かぶ熱帯の島。大陸から遠く離れているため、大陸の文化とは違う独自の文化で栄えた。
だが最近はレグヌムによって植民地化され、徐々に大陸の文化の波が押し寄せつつある。リゾート開拓も進められ、高級リゾートホテルなども多く建設されている。


「ここがガルポスかあ。空気の匂いが全然違うね」
「うえ〜、蒸し暑い…」
「このガルポスは、戦争で敗北し、王都の管理下…まあ、いわゆる植民地化されている」
「植民地化か…、言葉の物々しさとは雰囲気が違うなあ」
「政策が上手く行っている証拠だろう。ヘタに締め付け、叛乱でも起こされれば大火傷を負いかねないからな。銃後の警戒も戦勝国の責任だ」
「みんな朗らかな顔しています。戦火が遠いため、心に余裕があるのですね」

アンジュ姉さんが嬉しそうに、ガルポスの人々を見るとリカルドさんが少しだけ顔を顰める。

「フン、緊張感のない面だ。俺には馴染まんな」
「でもみんな生き生きとしていて楽しそうですよ、活気があるなあ…」


港の近くには露店がたくさんあって、綺麗な貝で出来たアクセサリーや、美味しそうなフルーツ、南国特有の商品がズラリと並んでいる。なんだか、素敵だなあ…!不謹慎だけど、リゾートへ旅行に来た気分になった。エルマーナもどうやら同じだったようで、コーダ君の手を引きながらガルポスの市場へと一足先に行ってしまった。あああ、私も行きたい!

すると、そんな私を見かねたアンジュ姉さんがにっこりと笑って手を打った。

「せっかくだから、わたし達も南国の新鮮なフルーツを賞味しましょう」
「(アンジュもなんだかんだで食欲旺盛だよね…だから太)」
「あらあ、イリア。その目はなあに?」
「ななななななんでも!そうだルカいっしょに行きましょ!おいしーいフルーツ食べ放題の旅へレッツゴー!」
「えええ、でもお金の使いすぎは駄目だよー」
「いいから早く来なさいおたんこルカ空気読め!」
「な、なんなんだよぉおお」

まるで嵐のように、去っていったイリアとルカ。
そんな二人にため息をついたアンジュ姉さんはこちらに向き直る。心なしか少しだけニヤついているみたいだ。


「確かに、この暑さで喉が渇いた。汁気の多い果物はまたとない滋養になるだろう」
「それではリカルドさん、わたしと一緒にフルーツジュースを飲みに行きましょう?名前とスパーダくんは二人で露店でも見てらっしゃい」
「…え、」
「ふふっ、デートに行ってらっしゃい?」
「ア、アンジュ姉さんっ!」
「スパーダくん、名前をよろしくね?」
「あ、ああ…」

スパーダがコクリと頷くと、アンジュ姉さんは満足そうに笑ってリカルドさんと共に(こちらもニヤニヤと笑っていた)露店のほうへ消えてしまった。
残された私とスパーダ。…あれ、私…アンジュ姉さんとリカルドさんに付き合ったこと言ってないと思うんだけど…。


「大人はなんでもお見通しだな…」
「ほ、ほんとだね…」
「……ま、こんな機会なんて滅多にねぇんだ。…行こうぜ」

スパーダはそう言って、私に右手を差し出してきた。…?
私が反応しないでいると、彼は痺れを切らしたかのように私の左手を取り、そのまま歩き始める。


手、繋いでる…っ!


何だか、感動して胸がドキドキして止まらない。
触れ合う手から彼のぬくもりが伝わってきて、それがまた私をドキドキさせて…。

目の前にあるスパーダの顔にも暫く気がつくことが出来なかった。…え、目の前って…え、え、え、え…


「!!!?」
「う、うわっ!何で急に後ずさるんだよ!」
「だ…て、だって、ち、近い…っ!」
「それは仕方ねぇだろ、お前が何回呼んでも反応しなかったのが悪いんだよ」
「ご、ごめん」
「別にいいけどよ。…ほらよ」
「え…?」

スパーダに手渡されたのは、美味しそうなパイナップルジュース。
見れば、彼の手にも同じものが握られていた。


「貰っていいの?」
「ああ、俺のおごり。飲め飲め」
「ありがとスパーダ!」
「お、おう」

私から視線を逸らしてパイナップルジュースを勢いよく啜るスパーダを疑問に思いながら、私も美味しそうなジュースを飲んだ。…ううーん、美味しい。




20111010




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