聖堂が崩れ去ったので、寝るところがなくなった私は自分のポシェットの中に入っていた僅かなガルドで宿屋に泊まっていた。
聖堂が壊れたからといって、私のことを気遣ってくれる人はいない。私はアンジュ姉さんの近くにいた人間だから。これで異能者と知られたら、私も同じように軍に差し出されてしまうのだろうか。

もしかしたら、私が捕まればアンジュ姉さんの居る所まで連れて行かれるかもしれない。そうしたら、助け出せるかも…。
だが、軍のことなどを調べていくうちにいろいろなことを知ったのだ。

まずは、天術について。
私たち異能者は天術と呼ばれる力を使えるらしい。アンジュ姉さんの使っていた「奇跡」のことだ。
自分が異能者と気づいた瞬間、私の頭に詠唱のフレーズが現れた。きっとその通りに言葉を発したら、天術が使えるのだろう。
あと、異能者になったおかげで私の身体能力は向上した。異様なほど飛び上がることもできるし、走るのも早くなった。

これだけのものがあれば、私一人でもアンジュ姉さんを助けられる。…そう思ったのだが、先ほども言ったようにきっとそれは無理だった。

グリゴリ族という種族の存在、彼らは異能者の力を無効化してしまうらしい。
彼らはレグヌム軍によって支配されているため、もしかしたら基地に見張りとしているかもしれなかった。
もし、自分の力を無効化されて私まで捕まってしまったら、元も子もない。

後は、アルカの存在。
新興の宗教団体というのは、以前から知ってはいた。だが、ここ最近勢力を伸ばしてきている。
教団に入信すれば、異能者捕縛適応法から逃れられるらしいが、どうも怪しい。私には異能者を集めて何か企んでいるとしか思えなかった。
そしてそれが私にとって恐怖の対象になっていたからだ。
動いてしまったら、目を付けられるかもしれない…。アルカが恐ろしかった。

とにかく、まだアンジュ姉さんが収容されているところも分からない。私にはただ待つということしかできなかった。


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