「ヒィヒヒヒヒ!強い、強いなァ。いいぜ、強い奴が好物だ。お前の血、血を吸い尽くしてやる!ヒャーッヒャッヒャッヒャ!」
「貴様のような外道の相手はいささか腹にもやれる。とっとと死ね。…デュランダル、止めだ!!」
「貴様などがグングンルの兄だとはな…。だが、彼女がお前に縛られて日々苦しんだことは事実…。許さん、魂すら切り裂いて転生の輪廻から外してくれる」
「ヌかせえ!てめーこそ、真っ二つにしてやる!」
頭の中に流れる光景。…もう慣れてしまった、この感覚。
ああ、お兄ちゃんとスパーダが戦っているんだ。デュランダルとゲイボルグが戦っているんだ…。
私は、私は…やっぱり信じることができない。
お兄ちゃんに何があったというのだろうか?昔はあんなのじゃなかった、お兄ちゃんはちょっとおちゃらけた所もあったけど、気さくで…家族思いの、優しい人だった。
お兄ちゃんの前世は、魔槍ゲイボルグ。
「より簡単に殺せる武具」
もしかして、お兄ちゃんは転生者として覚醒してから…おかしくなったのかな。
ゲイボルグの影響で…あんな風になっちゃったのかな。
そして、暗転。それから再び、光が溢れる。そこで、これがいつもの記憶の場の上に立ったときと一緒の流れだという事に気がつく。(誰かが、ケルム火山の記憶の場に立ったのかもしれない)
見えたのは、炎に鉄。…ああ、バルカンの作業場だ。
台に置かれたグングニルとそれを見るバルカン。…先に口を開いたのは、グングニルだった。
『ワタシ、は…』
「お前はグングニルだ。ワタシはバルカン。お前の父なる存在だ。…お前は、イナンナ様への愛の祝福のために生まれた存在、イナンナ様を守ることだけを、考えよ」
『…愛の祝福。…ダガ、バルカン。ワタシハ…私のナカに流れるこの猛った血ハなんだ、コロセ、と体が疼く』
「…やはりゲイボルグが混ざったか。…だが案ずるなグングニルよ、愛の祝福を与え、与えられた時、お前の真の力がきっと発揮される。愛の祝福を忘れてはならぬ、愛の祝福はきっとお前を狂気の力から救ってくれようぞ」
『愛ノ祝福…』
愛の祝福?
一体どういう意味…、とバルカンに聞こうとした瞬間に、私の頭がスッキリし始める。
そして、私の瞼の裏に光がさした。