―ガラム
火山が連なる山岳地帯に築かれた国。鉱物資源に恵まれたことから、古来より鍛冶や製鉄業が盛んである。



「鉱物集まるところ、鍛冶師も集まる。昔からここは職人の町だ。そして、優秀な武具は多くの武芸者も招く。火山は修行地としても有名だ」
「へえ、そりゃ楽しみだな」

ガラムに着いた私たちは、港でこれからどうするかを話し合っていた。


「ここは火山が神格化した鍛冶の神信仰でも盛んなところなの」
「へえ、そりゃあんまり興味ねーな」
「スパーダ君、話は最後まで聞きなさい。…雄大な自然は神格化される事が多いけど、ここも教会様式を独自に変化させ、独特の信仰を発展させたの。火は鍛冶と関わり合いが深いでしょ?教会様式以前から火の神バルカンの信仰があったのね、きっと」
「バルカン…!?」
「どうしたの、名前?」
「い、いや…何でもないよ、うん」


ここは、バルカンの聖地…なのか。
そういえば…バルカンは転生していないのかな。あと、ゲイボルグも…。
ガラム…何だか自分に縁がありそうな土地だ。…何か、重要なことを思い出したりしてね。


「ねえ、なんだか騒がしいよ。どうしたんだろ?」
「ケルム火山のほうね、行ってみましょう」


上っていた階段を駆け上がると、門番がこちらを睨みつけてきた。
きっと、その後ろにある扉がケルム火山内部へと通じているのだろう。


「ここから先は立ち入り禁止だ」
「通してくれよ、オッサン」
「お前ら、この町の者ではないな。この先は観光地ではないんだ。街へ帰れ。上にはな、殺人鬼のハスタがいるんだ」


――ハスタ


「だから街へ戻るんだ。いいな?」
「アイツか…」
「ああ、あの西の戦場で見かけたデタラメなヤツね…」
「仕留めたと思ったが。奴め、おめおめと生き恥をさらすのか」


――ハスタ


「どうしようかしらね。仕方ないから、とりあえず街に戻って考えましょう」
「ほな、街の人から情報を聞いてみるんもエエんちゃう?」


ウソだ、だって、ハスタなんて名前…、在り来たりだよね。でも、でも…


「名前、どうしたの?顔色が悪いようだけど…」
「…リカルド、さん」
「どうした」
「…ハスタって、知り合い?」
「…ああ、そうだが」
「…ハスタ・エクステルミ、って名前?」
「…!」


そうか、だからリカルドさんは私を見たときに驚いていたんだ。
私が…ハスタ・エクステルミ…お兄ちゃんと、似ているから…!


私は駆け出す。何も考えられなかった。門番を押しのけ、一人ケルム火山の中に飛び込んだ。



「名前!」


みんなが呼び止める声がしたが、無視して全力で走った。



…私は、私は…!





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