あれから皆集まって、情報交換をした。そしてアンジュ姉さんが見つけたという王墓に足を運んでみたのだが墓守たちに立ち入りを禁止された。
だが、アシハラのお爺さん(実は王様だったらしい)がアマードボア討伐を交換条件に王墓へ入ることを許可してくれた。これもルカの機転のおかげだ。

アマードボアを10体討伐した私たちは、再び王墓の前に行った。墓守たちに事情を説明して、私たちは海底に造られた王墓内部へと足を踏み入れた。


「うっわ広っ!お墓でしょ?ここ!」
「権力者のお墓って、大きく作られるのが普通だよ」
「そうね、ルカ君の言う通り。自分の権力をより大きくみせるためね。…もっとも、ここは神殿としての意味合いを兼ねているようだけど」
「という事は、また祭壇のような所に目当ての物がある、と?」
「その可能性は高いと思います。天上信仰の祭事を執り行っていた祭壇は、どこかに必ずあるはずです」


資料で見たのだが、この王墓は代を重ねるごとに玄室の数を増やしたため、非常に複雑な造りになっていた。
墓守がいる理由は王族の墓守りという意味合いももちろんあるが、迷い込んだまま出ることが叶わず命を落とす者がいることから、そのために見張りをしているという理由もあるらしい。


「あーなんか、息苦しい気ぃする」
「階段でかなり降りて来たからな。おそらく、ここはもう海中に没している位置だろう」
「はあ…、ソレ聞いてよけいに息苦しなったわ」

確かに…、入り口から結構歩いたし酸素も薄くなっているのだろう。…私も少し苦しいな。
するとスパーダが私に近づいて「大丈夫か?」と心配してくれた。


「あ、うん…大丈夫」
「そうか、それなら良いんだけどよ…、あー…」
「どうしたの?」
「…その、髪飾り」
「?ああコレ?さっきお店に売ってて、リカルドさんに買ってもらったんだ」
「……」
「スパーダ…?」
「お前らさ、最近仲良いよな」
「え?」
「…なんでもねえ」


スパーダはそう言うと、さっさと先へ歩いて行ってしまった。…どうしたんだろ?
大聖堂の裏でのことがあった時から、スパーダと話すことが多くなった気がする。でも、何だか妙な距離感がある…気もする。

私がスパーダへの気持ちを自覚してしまったから、こんな風に感じちゃうだけ…なのかな?





しばらく進むと、大きな壁画があった。中央に描かれた大きな太陽みたいなもの、人が落ちていく様子。そして、傍らには鍾乳洞で見た天上の文字も書いてあった。
アンジュ姉さんが文字を読み上げる。


「初めは天も地もなく、原初にただ創造神在りけり。永劫の孤独を疎み己の体を世界とし世界を生む、世界と神々、共々に在り。然し卑しき神に溢れし時来る。卑しき神、神にあらず。人と貶め天より地に落とす。以後、天・地隔て悠久を経る」


…つまり天上は原始の巨人の死から始まったということだ。
初めは世界もなく巨人が一人いただけ…。巨人は一人で寂しくて自らの体から大地を、頭から神々を生んだ。

大地は栄えたけど、悪い神様も増え始めた。だから神々は地上を作り、そういう悪い神たちをそこに閉じ込めた。
天から下ろされて力を奪われた神々は「人」となった。それから長い時が経った…か。


「そういや、普通の人は自分が神の末裔だって知らないのよね?あたしたちは前世の記憶があるからわかってたけど」
「なんだあ、じゃあ転生者は特別でもなんでもないのかあ」
「いや、違う。転生は天上界のみの仕組みだ。神ではない地上人には起こりえない…はず」
「そうなの?」
「地上人の魂は死神に天上に運ばれ、天のいしずえにされてしまうのだ。天上の魂が地上に流れるなどありえん」
「ありえてるじゃない。あんたやあたしがその証拠!」
「それがわからんのだ。なぜ、そうなったのか…」
「ほな、人の全員が全員、前世持ってるってワケでもないん?」
「そういうことだ。あくまで我々転生者は不測の事態にすぎん」


…不測の事態、か。
だけど、その不測の事態が起こったおかげでスパーダや皆と再会できたのは、私にとっては嬉しいことだ。

何故転生者が存在するのか。…これは自分にも関わることだ。
記憶の場をまわる旅をしているんだ、きっといずれ分かるだろう。


「話は戻るけど、天から降りて来た神が僕たちの祖先だって話、なんで伝わらなかったの?」
「それは教会が内緒にしたからよ。自分たちが元神だったら、天の神様に熱心に祈ろうとは思えなくなるでしょ?人々の信仰心をつちかうための教会の処置なのよ」
「事実を捻じ曲げてんじゃん?そんなことしていのかよ」
「大昔のことだから時効ね。それに信仰のない人間は怠惰で傲慢な人間になってしまう。…必要なことだったのよ。もっとも「無恵」のおかげで信仰そのものが薄れてしまったけど」


ともかく、もう少し先に進んでみることになった。



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