図書館の奥へとやってきた私とルカとスパーダ。ルカは早速本棚に向かったのだが、スパーダはすぐさま寝るのにはちょうど良さそうな隅っこへ行って腰を下ろした。
「スパーダ!ちゃんと仕事してよ!」
「ああ〜?かったりぃ、ルカにやらせとけば良いだろォ?」
「駄目だよそんなのっ!」
「マジで真面目ちゃんだな、お前。何と言われようと俺は寝るからな」
「スパー「名前、僕がスパーダの分までやるから平気だよ!」…でも…」
ルカがたくさんの本を持ちながら、困ったように笑う。
私が困惑していると、ルカは本を机の上に置き、私を手招く。そちらに向かうと、ルカは付箋を私に渡す。
「とりあえず、信仰関係の本をタイトルだけで判断して集めたから、該当の記事に付箋をお願いしても良い?流し読みで全然構わないから」
「あ、うん…」
「僕はこっちの資料を纏めるから、終わったら声をかけてね」
「ルカって…勉強得意でしょ?要領がいいよね」
「えへへ、ありがとう。じゃあ頑張ろう」
そう言うとルカは奥にある机へと向かっていった。とにかく、ルカに言われた通りにしよう。…私は本を捲った。
それから、時間が経って、私は5冊目の本に目を通し終えた。…少し疲れたな、と思い立ち上がり、ぐいっと背伸びをする。…ふと後ろを見ると、寝息を立てているスパーダの姿が。このやろー…
私は彼に近づき、よく観察した。
「睫毛長い…。変態のくせに」
スパーダはかっこいい、と思う。いつもはふざけてばっかりだけど、真面目な表情の時とのギャップが…なんというか、すごく…まあ、そのあれだ。まあ、世間一般からしてみたらカッコいいんでないの?
って、もう本当に何考えてるんだろう…。ああ、多分あれあ。アレだ。さっき帽子貸してもらったから、優しくしてもらったからちょっと気になってるだけだ。…それだけだ。ブンブンと頭を振っていると、急に右腕を掴まれてスパーダの身体に引き寄せられる…!!?
「きゃっ!」
「静かにしろよ、ルカちゃまが来るだろォ?」
「お、起きてたの…?」
「お前が立ち上がったときにはな。…人の顔ジロジロ覗いて…変態はどっちだか」
「っ――!は、放して!っひあっ!」
「良い匂い」
「や、やめ…スパーダ…」
いきなり、スパーダが私の首筋に顔を埋めてきた。首に彼の唇が当たって、その…とってもくすぐったい。
何なのコイツ、寝ぼけてるの!?そ、それにしても…くすぐったくて、何か……っ!徐々にスパーダの手が下へと下がっていく…
「グングニル、愛してる…」
「!!」
その言葉を聞いた瞬間、スパーダの身体を突き飛ばしていた。そして、彼に貸してもらっていた帽子を投げ返す。
グングニルの名前を言った自分にか、こんなことをした自分に…それとも突き飛ばされたことに驚いているのかはわからないけど、スパーダは突き飛ばされた態勢のまま固まっていた。
「最低っ…!」
そう吐き捨てて、私は踵を返した。スパーダの私を呼び止める声がしたけど、無視した。
私は嫌だった。もちろん、グングニルと呼ばれたことにもだが、少しだけ…浮かれていた自分に、嫌気が差したのだ。
「名前!?」
机に向かっていたルカが私を呼んだが、それも無視して、私は一気に図書館の外まで出た。
「ルカくんスパーダくん、名前が外に出て行ったようだけど…何かあったの?」
アイツが出て行った後、すぐさまアンジュがやってきた。そんなアンジュに、ルカが分からないと首を横に振る。二人の視線は俺に向けられた。
…正直、今は一人になりたい。何であんなこと言っちまったんだ…なんで、あんなこと…やっちまった?
アイツは、俺の前世での恋人だったグングニルの転生者。
少しだけ気になるのは、前世のせいだと思っていたけど…。
アイツ…名前は、可愛い。前世の贔屓目なしで、だ。それに、仕草がいちいち可愛いというか…。
この感情は一体何なんだろうか?…恋、なのか?…いや、でも…前世の記憶や想いとごちゃごちゃになっているのかもしれないから、断言できない。
「(それにしても、やっちまった…)」
浮かれていたとはいえ、グングニルなんて呼んじまうなんてな…。
俺だって、ああいう状況でデュランダルーなんて呼ばれたらめちゃくちゃ腹立つし…。あーあ…
とりあえず、鬼の形相なアンジュにどう説明するか、だな。