(眠れぬ夢を番外編/未来の話)







「こンのクソ餓鬼待ちやがれテメェ!」
「うっせーよジジィ!」
「は?!ジジィだとこのクソ餓鬼!まだオレは若ェよ!」
「こらスパーダ!汚い言葉使いしない!この子がマネしちゃうでしょ?」
「ジジィ、ママに怒られてやんのー!」
「うるっせぇんだよ!!」



レグヌム郊外に佇む一軒家。その家からはいつものように賑やかな声が聞こえていた。
小さな台所で夕食のシチューを作る母親の#名前#、そしてはしゃぎながら父親を「ジジィ」とからかう息子、そして「ジジィ」ことこの家の主、スパーダ。

あの冒険から数年後、二人は結婚して幸せな家庭を築いた。やがて二人の間に新しい命が誕生し、幸せに暮らしていた。…だが、最近父親と息子との間での衝突が激しい。この間様子を見にやってきたリカルドが「どちらが餓鬼か分からんな」などと言葉を残していったが、まったくその通りだ、と名前は鍋をかき回しながら溜息をついた。



「ねぇママぁ、ジジィがうるさいよー」
「ジジィじゃないでしょ?パパ、だよ?」
「!!!名前もう一回言ってくれよ!パパって、なんかクるな…」
「変態クソジジィ気持ちわりぃ!」
「ス、スパーダ…」
「うッ、うるせー!」


スパーダは昔と変わらず、大人になった今でも思春期の少年のような思考回路だ。つまりは、子供みたいということ。
2人の衝突は、もちろん息子の言葉使いが悪いことにも原因があるが、そもそもその原因を作ったのはスパーダだ。強くてかっこよくて頼りになる人なのに…なんでこうも頭の中は子供なのかしら…。

名前が食卓にシチューを並べると、言い合っていた二人は揃って手を洗いに流し台に向かう。その後ろ姿は本当にソックリで、それを見ているとひどく安心する。
食卓に着くと、喧嘩も無くなり黙々と食べ始める父と子。名前はそんな二人の様子に笑いながらシチューを口にした。…うん、おいしい。

夕食を食べ終わり、食器を片づけながら#名前#はお風呂に入るよう促す。すると息子が名前の腰に腕を巻きつけながら、甘えた口調で話しかけてきた。


「オレ、ママと一緒に入る!」
「んー…ママ、洗い物の後にやることがあるから、スパーダと一緒に入ってくれると嬉しいな」
「えーやだぁ、ジジィクサイもん!」
「なんだと!?」
「うわ、叩くなよジジィ!」
「はぁ…まぁとにかく一緒に入るぞ、名前の邪魔すんな」


散々言ったけど、スパーダはやっぱりお父さんだ。
海軍の仕事で疲れているのに、息子の相手をして、家のことも手伝ってくれて…。昔から大好きだったけど、結婚して一番近くにいるようになって、ますます好きになっていった。

洗い物を終えて家計簿をつけていると、お風呂からあがった息子がスパーダに手を引かれながら「おやすみ」と私に一言残してベッドへ向かっていった。
さっきまで眠そうになかったのに、…いったいお風呂でどんな遊びをしたんだ…?なんて考えていると、息子を寝かしつけたスパーダがふらふらとした足取りでやってきて私の隣に座った。


「お疲れ、ありがとう」
「はぁ〜マジ疲れた。アイツ、この前イリアにもらった水鉄砲でオレの鼻の穴目がけて撃ってくるんだぜ?」
「ふふっ、なにそれ」
「笑い事じゃねーよ…マジ痛ェんだよ」
「ふふ、ごめん。そうだ、何か飲む?」
「あ…飲む。コーヒーある?」
「ん、あるよ」


名前はつけ終わった家計簿をとじると、ゆっくりと腰を上げてキッチンへ向かう。
慣れた手つきでコーヒーを2杯淹れていると、腰に温かい何かが絡みついた。


「どうしたの、スパーダ」
「なんか不足してんだよなー」
「なにそれ…んっ、もう、くすぐったいよ」


首に顔を埋めてくるスパーダをてきとうにあしらっていると、何を思ったのかスパーダは名前の体をクルリと反転させて、それから自らの唇を#名前#の唇に押し当てた。
名前がこれから起こることを予想していると、スパーダが息子と同じような甘えた声で名前に話しかける。


「名前」
「どうしたの?」
「オレ、疲れてんだよな」
「…うん」
「…癒してくんねぇかなーって」
「……、コーヒーはどうするの?」
「また、淹れたら良いだろ」
「…はぁ、わかったよ」
「よっしゃ!じゃあベッド行こうぜ!」
「(…万年思春期)」





20120507

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