(少し注意)



楽しそうな笑い声が聞こえてきて、ぼくは眉間に皺を寄せる。
…まただ。彼女は、ぼく以外の人間に笑顔を見せる。だけど、ぼくがいる時には一つも笑わないのだ。二人きりのときもまた然り。

#名前#はぼくの彼女のはずだ。なのに、ぼくに笑顔を見せたことなんてない。
話をするときはいつも俯いているし、ぼくが何を言っても相槌しかうたない。自分から話そうとしない。



だけど、ぼくは彼女のことが好きだ。
こんなに愛した人間は他にいないくらい、好きだった。だからこそ、苛立つ。他の男と、話すな。笑うな、何故何故、なんでぼくには笑顔を見せない。何でぼくらは付き合っているんだ?本当にぼくのことが好きなのか…?


そして、ふと思いついた。…分からないのならば、聞けばいい。
どんな手を使ってでも。…酷いかもしれないが、ぼくには耐えられないんだ。彼女の彼氏はぼくだ。それは事実なんだ。
…だから、ぼくはリチャード陛下と喋っていた彼女の手を掴み、自分の部屋に連れ込んだ。



「あなたが、何を考えているのか…ぼくには分かりません」
「……」
「何でぼくには笑わない?何でぼくと普通に話せない?」
「…そ、それは…」


そこまで言って口篭る名前。彼女は、都合が悪くなるといつも言葉を濁すんだ。
ぼくの頭に血がのぼる。いつもいつもこうだ。いつまでもこんな扱いでは怒るのも当然だろう?

ぼくは、彼女の腕を掴みベッドに投げた。
そしてその上にギシリと音を鳴らしながら、ぼくは乗る。急いで起き上がろうとする彼女の腕を拘束して、ベッドに張りつけた。


「!!ヒュ、ヒューバート?」
「……」


彼女の頬に触れると、ビクリと体を揺らす。そして、彼女の服に手をかけた。
途端に暴れ始める#名前#。どうやらやっと分かったようだ。

何か言おうと口を開いた彼女の唇を塞ぐ。深く深く口付けて、舌を絡ませて、吸い付く。
彼女の口から漏れる切ない息遣いは、ぼくを興奮させるだけだった。


やっと唇を解放すると、彼女の頬は涙で濡れていた。「な、んで…こんな…」
さも自分だけが被害者のように振舞う彼女。そんな彼女に苛立ち、そして服を乱暴に脱がせる。ボタンが辺りに飛び散り、カランカランと切ない音を立てて落ちていった。

名前の肌に唇を寄せながら、痕を残す。


「なんで…っ、ひぁ、な、ん…」
「……」
「やだよぉ、わかんない、なんで、なんでこんな酷いことするの…?」
「っ!」

ぼくは唇を離し、彼女をキッと睨みつけた。
何で、だと?それはこっちが聞きたい。なんで、なんで…


「じゃあ、何でぼくに笑いかけてくれないんですか?何で他の人には笑顔を見せるのに、なんで、ぼくには話しかけてくれないんですか?」
「!!」
「…ぼくは、あなたがわからない。本当は、ぼくのことなんて…好きじゃないんですか?」
「ち、違うっ!」


それは、ぼくが始めて聞いた彼女の叫び声だった。
思わず固まったぼくに、彼女は抱きつき、そして続ける。


「は、恥ずかしかったの!」
「恥ずかしい…?」
「…ヒューバートが、かっこよすぎて…、話しかけれなかったの」
「…」

…?い、今彼女は、何て…
かっこよすぎて、話しかけれなかった?彼女が、ぼ、ぼくに…?


「でも、ぼくたちは…付き合っているんですよ?」
「だ、だからだよ!」

彼女は、顔を赤らめシーツで身を隠しながらぼくを向く。


「付き合ってる、って思ったら…。嬉しくて、恥ずかしくて…。うまく笑えなくて、ううっ…」
「名前…」
「でも、そんな態度をとってたから…ヒューバートは嫌な思いをしてたんでしょ…?…ごめんね」
「…ぼくこそ、すみませんでした。…勘違いしていたとはいえ、酷いことを…」
「…あ、あのね…でも…」
「?」
「キス、嬉しかった、よ?」


そこまで言ってシーツに潜り込んだ名前。ぼくも不意を付かれて真っ赤になる。
そして、我に返ると、シーツごと彼女を抱きしめた。




ジグザクココロ






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かなさんのみお持ち帰りokです




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